本課題は治療抵抗性統合失調症が幾つかの明確なサブタイプから構成されるとの仮説のもと、神経画像と遺伝子学的アプローチを中心に、特にドパミン過感受性精神病(DSP)と耐容性不良の病因を検証する目的に実施された。 1)CT画像研究:研究実施機関に保管される頭部CT画像を活用し、縦断的にスライス毎に面積を計測した。現在まで計76名(合計168回)の撮像が解析対象となっている。このうち複数回撮像した者38名(合計122回撮像)を解析実施を終了した。撮像毎に側脳室レベルのスライスから3枚(上・中・下スライス)を選択し、Analyzerの半自動ROI設定機能によって頭蓋内面積と脳溝・脳室面積を測定し、萎縮率を算出する手法で解析を実施した。その結果複数回撮像者(撮像間隔: 平均2322.2日)にて平均14.0%から17.0%(3スライス平均)と進行性の萎縮を認めた。 2)CYP2D6遺伝子多型*10によるDSP形成の検証:リスペリドンの長期治療中の36名を、*10を有する21名と有さない15名について、前者はリスペリドンと活性代謝物9-水酸化リスペリドンの濃度が高く、(有意差はなかったが)高率にDSPが形成されやすい傾向を示した。 3)耐容性不良群(遅発性ジストニア)遺伝子解析:3名の遅発性ジストニア患者に対してExome解析を実施し、ZNF806とSART3上に3名に共通する稀な遺伝子変異を発見した。続いて16名の患者を集め、見つけた稀な遺伝子変異2つを対象に、関連研究を実施した。その結果、SART3上の変異はジストニアとの関連は見いだせず、ZNF806上の変異に関しては変異そのものが否定される結果となった。その後の検証でZNF806上の変異はExome解析におけるエラーである可能性が高い結果と出た。
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