研究課題/領域番号 |
17K10270
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
戸田 重誠 昭和大学, 医学部, 准教授 (00323006)
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研究分担者 |
西川 宏美 金沢大学, 医学系, 研究員 (70534155)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 習慣 / 目標指向性行動 / 注意 / 線条体 / 最初期遺伝子 |
研究実績の概要 |
計画通り、FIスケジュールに報酬タイミングを知らせるブザーを組み合わせた場合のArc, c-Fosの発現パターンについて解析を行った。また、Arc、cFos以外の最初期遺伝子であるFosB、NPAS4についてもデータを収集し、後者の2つとも、あまり習慣化の過程と相関がないことを確認した。さらに線条体でArc発現を誘導しているのは、淡蒼球外節からの抑制性入力ではないかと仮説を立て、細胞選択的な破壊実験の予備実験を行った。 一方、オペラント訓練を4週間施行し、ラットの行動が一旦習慣化したのを確認後、扁桃体外側基底核(BLA)のcFos発現細胞を選択的に破壊したところ、一旦習慣化した行動が2週後に再度目標指向性行動に戻ることを確認した。サルでは似たような現象が後部線条体の破壊で起きる。サルの後部線条体に相当するラット尾側背内側線条体は、直接BLAに投射する。そこで、「尾側背内側線条体からBLAへの投射が習慣化記憶の貯蔵あるいは呼び出しに重要である」と仮説を立て、4週間のオペラント訓練終了後にラットの行動が習慣化していることを確認の後、BLAにタンパク質合成阻害剤を局所注入して記憶の貯蔵阻害し、その2週後に習慣化した記憶が呼び出せるか検討した。 また、「目標指向性行動から習慣化への移行を妨げるのは訓練の連日反復であり、逆に移行を促進するのは一定期間の訓練休止である」と仮説を立て、通常習慣化しない7日間のオペラント訓練の後に、2週間の訓練休止期間を挟んで習慣化の有無を再検討したところ、行動が習慣化していることを確認した。さらに3週間の訓練反復を行ったところ、習慣化は維持されたがその間にレバー押し回数はさらに増加していた。以上の結果より、習慣化とは、反復訓練による運動技能の維持(固定化)を保証するものではなく、一時的あるいは恒久的な行動の自動化を目的としたものであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画を超えた新たな展開が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は補足実験を行うとともに、これまでの実験の結果をまとめて解析し、学会発表および複数の論文として発表していく予定である(現在1報を投稿中)。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学院生の早期修了のため、一時行動実験が延期となった。また、論文審査延長のため、必要とされる予想論文出版費用(約50万円)が最終年度に持ち越された。
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