研究課題/領域番号 |
17K10275
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
溝口 義人 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60467892)
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研究分担者 |
門司 晃 佐賀大学, 医学部, 教授 (00294942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミクログリア / 認知症治療薬 / アルツハイマー型認知症 / 細胞内カルシウムイオン動態 / NO / 貪食能 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】認知症の進行を抑制する根本的治療薬の登場はまだ先であり、認知症治療は4種類の認知症治療薬に当面頼ることになる。認知症治療薬がニューロン以外の細胞に及ぼす作用メカニズムについて知見が大きく不足している現状から、本研究では神経炎症仮説、脳血管性仮説に基づき、各認知症治療薬がミクログリア活性化およびミクログリアとともに脳神経血管機構を担う脳血管内皮細胞にどのように作用するのか、細胞内メカニズムを解明する。 【本年度に実施した研究の成果等について】 認知症治療薬ドネペジルを前処置したミクログリア細胞(ラットHAPI細胞、マウス6-3細胞、マウス初代培養細胞いずれも)において、TNFα投与後の細胞内Ca2+濃度([Ca2+]in)上昇およびNO産生が抑制されることを、Ca2+イメージング法、NOイメージングにより明らかにした。またフローサイトメトリー(FCM)により、ドネペジルを前処置したミクログリア細胞では、異物(ビーズ)貪食能が増強することも判明した。さらにドネペジルの作用機序として、MAPK/ERK系ではなく、PI3K/Akt系が関与することが示された。これらin vitro系の実験結果により、ドネペジルはミクログリアに対して、AChE阻害によらない直接作用を有することが示唆された。以上の研究成果を英文雑誌(Haraguchi Y, Mizoguchi Y et al.2017 J Neuroinflammation 14:258)、Society for Neuroscience 2017、日本精神神経学会、日本うつ病学会で発表した。今後も本研究課題の遂行により、ニューロン・グリア・脳血管系を想定した認知症の病態解明および治療薬開発に繋がる新たな知見を得たい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に達成を目標としていた、認知症治療薬ドネペジルがミクログリア細胞内Ca2+動態、NO産生能および貪食能を制御する細胞内メカニズムを特定することができた。研究成果について、英文雑誌(Haraguchi Y, Mizoguchi Y et al.2017 J Neuroinflammation 14:258)、Society for Neuroscience 2017、日本精神神経学会、日本うつ病学会で発表できた。さらに、ミクログリア貪食能については、Aβタンパク貪食能についても実験中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究成果を踏まえて、ドネペジルによるミクログリアAβタンパク貪食能増強効果の細胞内メカニズムを探り、同時に脳血管内皮細胞(Brain endothelial cells :BEC)に対する作用、細胞内機序についても研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に使用する予定がなく残額が生じたが、来年度の研究計画遂行のため、物品費として使用する予定である。
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