研究課題
わが国の認知症高齢者数は2025年に約700万人に達する。認知症の進行を抑制する根本的治療薬の登場はまだ先であり、認知症治療は4種類の認知症治療薬に当面頼ることになる。認知症治療薬がニューロン以外の細胞に及ぼす作用メカニズムについて知見が大きく不足している現状から、本研究では神経炎症仮説、脳血管性仮説に基づき、各認知症治療薬がミクログリア活性化およびミクログリアとともに脳神経血管機構を担う脳血管内皮細胞にどのように作用するのか、細胞内メカニズムを解明し、本研究課題の遂行により、ニューロン・グリア・脳血管系を想定した認知症の病態解明および治療薬開発に繋がる新たな知見を得たいと考えた。報告者らは、認知症治療薬ドネペジルがミクログリア細胞内Ca2+動態を制御し、ミクログリア活性化を抑制すること、一方で異物(IgG)貪食能を増強することを初めて報告した(Haraguchi, Mizoguchiら,J Neuroinflammation 2017)。ドネペジルは症状改善薬として認知症の進行を遅らせる効果が期待され用いられているが、一方、疾患修飾薬として認知症の進行そのものを抑制する一面も持ち合わせる可能性が示唆された。さらに報告者らは、ドネペジルはミクログリアの貪食能あるいは機能維持に重要なTREM2およびDAP12の発現を増強し、Aβ貪食能を増強することも見出した(SfN 2019他で発表)。ドネペジルはミクログリアの貪食能およびAβの処理に関わる関連タンパク(ネプリライシンなど)の発現を制御することも判明し報告した(投稿準備中。溝口 2019年 第115回日本精神神経学会シンポジウムで発表)。今後は、認知症治療薬がどのようにミクログリアおよび脳血管内皮細胞に作用するか、とくにAβ処理(取り込み・排出)能に着目して研究を進める必要がある。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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