研究実績の概要 |
本研究は,片側パーキンソン病モデルラットに生じるレボドパ(L-DOPA)誘発性不随意運動の発現に線条体のアストロサイト(グリア細胞の一種)がどのような機序・様式で関与しているのかを解析する行動薬理学的研究である。 1)6-hydroxydopamineによる片側パーキンソン病モデルラットの作製:三種混合麻酔薬(塩酸メデトミジン,ミダゾラム,酒石酸ブトルファノール)投与下, 脳定位的に6-OHDAを片側の内側前脳束へ微量注入することにより,中脳ドーパミン(DA)神経を化学破壊した6-OHDAラット(片側パーキンソン病モデルラット)を作製した。6-OHDA注入2週間後に,メタンフェタミン誘起回転運動を観察し行動の偏位を定量化し,一定の基準に満たなかった動物は本実験より除外した。 2)L-DOPA反復投与に伴う不随意運動の観察:L-DOPA投与に際しては,まず芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬(末梢におけるL-DOPAの代謝を阻害し,L-DOPAがより効率的に脳血管関門を通過できる)のbenserazide (15 mg/kg, i.p.),引き続きL-DOPA methyl ester (15 mg/kg, i.p.)を1日1回投与した。なお,この実験で は,L-DOPA反復投与に伴う不随意運動を観察する目的で,L-DOPA投与1日,8日,15日,最終日に,各ラットのL-DOPA投与後3時間の行動観察を施行した。不随意運動の観察には,Cenciらの提唱した評価尺度(AIMs)を用いた。 3)免疫組織化学法(免疫染色)により,片側パーキンソン病モデルラットの線条体その他の脳部位において,L-DOPA急性投与および繰り返し投与によりc-Fos,FosB等の転写調節因子が異なる様式で発現することを明らかにした。
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