研究実績の概要 |
オキシトシン点鼻薬は本邦で未承認医薬品であり,本研究は2018年4月より施行された臨床研究法において特定臨床研究に該当する.この特定臨床研究として 継続投与試験を行うには実施体制として問題点や課題が多いため,オキシトシン単回投与試験を行う方針に切り替え,統合失調症患者を対象にオキシトシン投与群,プラセボ投与群とに無作為に割り付け,二重盲検下にそれぞれ単回投与を行うこととした.2018年3月末日まで,26名の統合失調症患者に対しての投与を行い,Facial Emotion Selection Test (FEST)を用いて投与前後の社会認知(表情認知)の評価とともに,事象関連電位であるミスマッチ陰性電位の測定を行った. その結果,オキシトシン点鼻薬群とプラセボ群とで投与前後のFEST total score,ミスマッチ陰性電位の振幅,潜時に与える影響に有意な差は認められなかった.サブグループ解析として,ベースラインのミスマッチ陰性電位の振幅により高振幅群,低振幅群に分けて解析も行った.低振幅群においてはオキシトシン点鼻薬投与により振幅の有意な増大を認めたが,この影響についてもプラセボとの有意な差は認められなかった. この統合失調症患者における結果については,国内学会(第49回日本臨床神経生理学会学術大会,第22回日本薬物脳波学会)での発表を行った.現在再解析を行い学術誌での発表に向けて論文作成中である.
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