研究実績の概要 |
これまでに統合失調症患者46人(男性27人、女性19人、平均年齢54.9±11.4、喫煙18人、平均罹病期間29.2±12.8年, 平均教育年数11.8±2.1年, クロルプロマジン換算抗精神病薬服用量814.7±634.0mg, PANSS得点74.3±16.9[陽性尺度14.5±5.1 陰性尺度23.8±5.7]、BACS-J得点48.7±48.7)の血漿中Glu, Gln, L-Ser, D-Ser, Glyを因子としたパス図を作成し、構造方程式モデリング法で解析を行ったところ、たところBACS-Jは年齢(p<0.01)及びGln濃度(p=0.37)と関連がみられた。PANSS得点とアミノ酸に関係はなく、陽性尺度および陰性尺度は共にGly濃度と有意な関係が認められた(各々p=0.12、p<0.01)。モデルのCFIはすべて0.92と妥当であった(CFI: comparative fit index:通常0.9以上が求められる)。今回の結果は、Glyと臨床症状、Glnと認知機能に何らかの本質的な関係があることを示しているのかもしれない。しかし今回検討されていない物質もあるなど、検討が必要な点が残されている。なお統計解析はSPSS Amos ver. 22.0を使用した。更に現在のところ85名でセリン合成酵素(PHGDH, PSPH, PSAT1)の遺伝子配列をリシークエンスしたところ、それぞれに変位を認め、特にPHGDHでは希な変位を伴ってL-セリン濃度が健常人の2SDを超えて上昇している被験者一名と健常人の1SDを超えて低下している被験者一名を見出した。各々の被験者の臨床症状の評価は終了しており、今後これら遺伝子変異の機能を培養細胞などを用いて確認する予定としている。
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