研究課題/領域番号 |
17K10283
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
仲地 ゆたか 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10522097)
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研究分担者 |
金沢 徹文 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20534100)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 全ゲノム解析 / 性同一性障害障害 / 性別違和 / 性ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
現在可能な最新の全ゲノム解析パイプラインと独自解析パイプラインの統合、候補遺伝子をもちいたin vitro検証系の準備が完了し一連の解析データを再調整した。解析環境のアップデートにより標準のヒト参照ゲノム(hg38/GRCh38)だけでなく日本人ゲノム情報(JG1)への対応を行い、変異頻度の情報も含め最新の公共データを利用した全ゲノム解析および大規模オミクックスデータとの統合解析をより詳細におこなえるようになった。また2次解析として性ステロイドホルモン受容体などの転写調節因子の認識配列解析などのバイオインフォマティクス解析も進めてきたが、in silicoだけではなくin vitro、とくに神経芽細胞などの株化細胞をもちいた遺伝子導入実験により候補遺伝子群の神経細胞における機能検証を順次すすめている。併せてマーカー蛋白と融合させた候補遺伝子由来産物の核内移行の確認や安定発現株作成についても現在解析を進めている。新規の性同一性障害(性別違和)当事者サンプルの確保も可能な限り追求するが、研究計画途上での研究体制の大幅な変更があったこともあり、次年度はin vitro系の解析の深度をあげて性同一性障害(性別違和)関連遺伝子の網羅的探索を進めていく予定である。当該年度に発表を予定していた国内外の学会が延期になるなど想定外の計画変更もあったが、現在までの進捗については第41回日本生物学的精神医学会(2019年6月23日・新潟)においてポスター発表をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究体制自体の大幅な変更にともなう機器の変更・縮小があったため研究計画の遂行が大きく制限されたことから進捗が大幅に遅れたが、計画していた検証実験(アゴニスト・阻害剤投与モデル動物や培養細胞をもちいた解析)については候補遺伝子の検証系構築と整備をおこなった。これまでにも性ステロイドホルモン受容体などの転写調節因子の認識配列解析などのバイオインフォマティクス解析を中心に進めてきたが、in silicoだけではなくin vitroの解析系、とくに神経芽細胞などの株化細胞をもちいた遺伝子導入実験により候補遺伝子群の神経細胞における機能検証を目的として、マーカー蛋白と融合させた候補遺伝子由来産物の核内移行の確認や安定発現株について解析をおこなった。 また性同一性障害(性別違和)当事者サンプル数は想定よりも小規模にはなったが、最新の解析環境へのアップデートにより標準ヒトゲノム(hg38/GRCh38)だけでなく日本人ゲノム情報(JG1)へも対応も可能になった。具体的にはこれまで独自に構築していた解析パイプラインと世界的に使われているGATK Best practiceとを統合することにより複数の最新ゲノム情報を利用できるようになっただけでなく、最新の日本人集団の変異頻度情報を含めた全ゲノムおよび大規模オミクックスデータとの統合解析をより詳細におこなえるようになった。これらの最新の解析ツールとデータベース導入による新構築の解析パイプラインによる候補遺伝子のリストアップと詳細な条件抽出の結果を踏まえ、現在これらの候補についてin vitro系による検証実験をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
性同一性障害(性別違和)当事者サンプル数は想定よりも小規模になったものの、最新の解析ツールとデータベース導入により解析パイプライン構築により候補遺伝子のリストアップの結果を受けて、次年度には現在これらの遺伝子についてin vitro系による検証実験を軸とした方策で引き続き研究計画を実施していく予定である。 具体的にはいくつかの候補遺伝子については神経細胞での発現や転写調節因子としての機能が知られていることから、モデル生物への性ホルモン投与による脳の性分化期での発現変化をRNA-seqなどの網羅的検出手法も併用して解析する。また培養細胞(神経細胞芽細胞や神経細胞に分化可能な線維芽細胞株)をもちいることで、マーカー蛋白と融合させた候補遺伝子由来産物の核内移行の確認などの細胞生物学的解析を並行しておこない、候補遺伝子の脳の性分化および性同一性障害(性別違和)機序への関連を詳細に考察しつつ、当該研究をさらに推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
性同一性障害(性別違和)当事者の全ゲノム解析分としてその他経費を計上していたが、想定のサンプル数に達しなかったことによりあらたな全ゲノム解析の実施規模に差が生じたことが、次年度使用額として大きな金額が生じた原因となっている。インデックスホッピング問題への対応で再解析が必要な既存サンプルがあることと、in vitro解析系の計画規模を再調整したにともなう計画の見直しにより、研究期間の延長をおこなう予定であり、次年度に上記の解析について適切に研究計画を実施遂行する予定である。
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