最新の全ゲノム解析パイプラインと独自開発した変異・多型解析パイプラインを統合し、既存データも含めた一連の解析データを解析した。引き続き解析環境のアップデートに併せて標準のヒト参照ゲノム(hg38/GRCh38)だけでなく日本人ゲノム情報(JG1およびJG2)への対応もおこなった。変異頻度の情報の更新も含め最新の公共データを利用した全ゲノム解析および大規模オミクックスデータとの統合解析をより詳細におこなった。2次解析として性ステロイドホルモン受容体などの転写調節因子の認識配列解析やGene Ontologyなどのアノテーション情報を用いたバイオインフォマティクス解析もおこなった。 また同時に注目すべき候補遺伝子群におけるin vitro系での機能解析をすすめている。in silicoだけではなくin vitro、とくに神経芽細胞(Neuro-2aなど)の株化細胞をもちいた遺伝子導入実験により候補遺伝子群の神経細胞における機能検証をおこなった。とくにマーカー蛋白と融合させた候補遺伝子の安定発現株を作成し、作成核内移行の確認および細胞増殖の変化を観察することができた。 新規の性同一性障害(性別違和)当事者サンプルの確保が事実上困難な状況もあり、研究計画途上での研究体制の大幅な変更があったことも影響したため、既存サンプルの再解析を重点的におこなったが、今後もサンプル提供数の増加を研究グループで追求し後継計画に繋げていく方針である。 本研究計画で得られた知見をもちいて現在論文化をすすめている。当該年度に発表を予定していた国内外の学会が延期・中止になるなど想定していた研究発表の機会が得難い状況が続いていたが、本研究の進捗については第42回日本生物学的精神医学会年会(NPBPPP2020、2020年8月21日)、第43回日本分子生物学会年会(2020年12月2日)などにおいて発表した。
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