研究課題/領域番号 |
17K10288
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
筒井 幸 秋田大学, 医学部, 助教 (40569604)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗NMDA受容体脳炎 / 器質性障害 |
研究実績の概要 |
ⅰ)悪性緊張病を疑われた症例や、ⅱ)けいれんと精神病症状の合併患者、ⅲ)非定型病像を呈する患者、ⅳ)難治例の統合失調症患者、ⅴ)ナルコレプシーで精神病症状を呈した患者を対象とし、昨年1年で70例の検体を得ており、HEK293細胞を用いたCell-based assayにより抗NMDA受容体抗体測定を行った。2例の陽性例が指摘できており、1例は更に抗Ma抗体も陽性であった。 1例は過去の症例のため現状把握は困難であったものの、経過や症状などを考慮すると典型的な抗NMDAR脳炎の経過をたどっており、悪性緊張病の経過とも極めて類似していた。 もう1例は症候性ナルコレプシーで過眠を伴うケースであり、同時に抗Ma2抗体も陽性を示した。精巣腫瘍を伴っており、泌尿器科と連携をとり腫瘍切除を施行した。これによりナルコレプシー症状は軽快したが人格変化、精神病症状などの精神症状は残存した。手術前も陽性であった抗Ma2抗体は術後も高力価のまま変化がなかった。SPECT上は前頭葉と頭頂葉の血流低下を指摘されており、また、神経心理学的検査上は異常は指摘されなかった。 この結果を受け、精神症状の改善をめざし免疫療法が施行されたが著しい改善は得られなかった。その後腫瘍の再発は認められていないが、精神症状も対症的に治療を行っているが著明な改善なく、器質的なダメージが残存したものと判断された。 以上のように、絶対数は少ないものの、精神科領域で精神科疾患として治療が行われた自己免疫性脳炎(脳症)は確実に一定数存在することが確認出来た。 これらを早期に見出し、適切な治療を行うことの重要性は高いものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
髄液、血清などある程度のN数を集積する予定であったが、適応と判断される検体があまり集まらず、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
抗NMDA受容体抗体だけではなく、他の自己抗体についても精査を行う予定である。 古典的自己抗体として、抗Ri、Yo、Hu抗体、新規抗体として抗VGKC複合体抗体などの測定も併せて行い、精神科領域における自己抗体陽性例の頻度とその症状、経過の差異を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体が思ったより集積出来ず、細胞培養用のメディウムなどの必要量が少なかったため。 抗体測定のキット購入、あるいは外注する抗体測定の支払いに使用する予定である。
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