研究課題
近年、辺縁系脳炎がその経過中に精神病症状を呈することが知られるようになり、非ヘルペス性の辺縁系脳炎の中でも頻度が多いものとして、抗N-methyl D-aspartate(NMDA)受容体脳炎の存在が認知されるようになってきた。精神科通院中の患者の中に一定の割合で同受容体抗体陽性者が指摘されており、統合失調症、うつ病と判断され ていた例やナルコレプシーの患者からの陽性例が認められている。本研究の目的は、1.精神科にて加療されている、統合失調症や気分障害などの内因性疾患群や精神症状を伴うナルコレプシーにおける抗NMDA受容体抗体の陽性頻度、2.抗NMDA受容体抗体陽性例の臨床的特徴、3.精神疾患として加療されていた症例より自己抗体陽性例を指摘することであった。合計113例の検体を得ており、HEK293細胞を用いたCell-based assayにより抗NMDA受容体抗体測定を行った。抗NMDAR抗体以外の抗神経抗体に関してはBMLに依頼を行った。精神科入院となったものの典型的な経過をたどったケースより複数例(6例)陽性例が指摘された。また、ナルコレプシーをはじめとした過眠症と抗NMDAR抗体の関連が推察されたケースが2例あった。また、傍腫瘍性症候群による辺縁系脳炎(あるいは脳脊髄炎)が疑われたが現状測定可能な抗体は全て陰性であったケースも2例指摘された。以上の結果より、神経免疫学領域の動向を注視し自己抗体の測定を継続していくことは、精神科領域においても意義のあることと判断された。
すべて 2020
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Neuropsychiatr Dis Treat
巻: 29(9) ページ: 1041-1050
10.1016/j.euroneuro.2019.07.137