研究課題
本研究では、血管内皮細胞由来の細胞外小胞(エクソソーム, EV)に含まれるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の生存・増殖を促進する分子を同定、この分子を包含するEVを用いた白質病巣の修復法を開発することを目的とした。ラット脳微小血管内皮細胞由来EV (MVEC-EV) に比べ、ラット線維芽細胞由来EV (Rat-1-EV) はOPCの生存・増殖を促進する活性が低い。これらの2つの異なるEVが含むタンパク質を質量分析により網羅的に解析した。質量分析による解析からMVEC-EV表面の画分にフィブロネクチン(FN)の存在が認められ、ELISAにおいても確認された。MVEC-EV表面のFNとOPC表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との結合を阻害することでOPCによるMVEC-EVの取り込みが減少し、OPCの生存・増殖促進効果が減弱することを明らかにした。また、MVEC-EVおよびRat-1-EVに含まれるタンパク質を比較し、MVEC-EVのみに含まれるタンパク質(869個)の中にOPCの生存・増殖を促進することが知られている血小板由来成長因子PDGF-Bが見出され、ELISAによりPDGF-Bの存在を確認した。抗PDGF-B抗体を用いた免疫電子顕微鏡によりMVEC-EVの膜表面にPDGF-Bの存在が確認された。ヘパリナーゼ処理したMVEC-EVではPDGF-Bの量が減少することから、PDGF-BはHSPGを介してEV表面に繋がれていることが示唆された。MVEC-EVを添加したOPC培養系にPDGF-Bに対する中和抗体を加えたところ、抗体存在下でOPCの増殖が有意に抑制された。また、PDGF受容体に対する拮抗薬も同様の効果を示した。これらの結果から、MVEC-EV表面に存在するPDGF-BがOPCの増殖を促進することが示唆された。
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Journal of Neurochemistry
巻: - ページ: -
10.1111/jnc.14949