統合失調症の培養脳スライスモデルを調製し、そこでの炎症反応の生起に伴うミ クログリアでの遺伝子発現変化を解析する ことによって、ミクログリアの活性化に関与する脳内因子を同定した。ここでは、ミクログリア特異的に緑色蛍光タンパク質(EGFP) を発現する遺伝子改変マウスの胎仔を、 polyriboinosinic-polyribocytidilic acid (poly I:C)に感染させた作製した統合失調症マウスモデル(EGFP-Schiマウス)の若年個体脳にて、申請者ら独自の蛍光機能プローブによ り、IL-1β前駆体からIL-1βを生成するカスパーゼ1の酵素活性を、生組織中でリアルタイムにイメージングし、ミクログリア活性化に先立つ炎症反応の惹起を検出することに成功した。さらに、炎症反応の初段階におけるカスパーゼ 1の賦活と、それに続くIL-1β産生に伴う蛍光機能プローブからの蛍光生成直後に、laser capture microdissection (LCM)によりミクログリアを分離し、ミクログリアにおける遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイを用い解析することで、ミクログリアの活性化を誘引する炎症性因子を同定した。そして、申請者らの統合失調症患者でのPETによるミクログリアの脳内動態解析の結果、顕著なミクログリアの活性化を認めた内側前頭前野等の脳領域について、EGFP-Schiマウスの脳スライスで、電子顕微鏡による形態学的解析とパッチクランプ法による神経回路解析を行った結果、活性化ミクログリアの生理的機能調節に働く傍ミクログリア神経回路の形態学的所見を取得するとともに、ミクログリア活性化抑制に作動するニューロン・グリア相関の分子基盤を同定した。
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