研究課題/領域番号 |
17K10295
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 真江里 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50778272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノムコピー数変異 / 統合失調症 / MRI / voxel-based-morphometry / functional connectivity |
研究実績の概要 |
申請者等は、大規模なゲノムコピー数変異(CNV)解析を実施し、統合失調症の発症に強い影響を及ぼすCNVを多数同定した。CNVが、脳の発達に重要な遺伝子の機能に影響を及ぼすことで神経発達障害が起こり、発症に繋がると推測される。本研究では、この結果をもとに、MRIを用いて高解像度T1画像、拡散テンソル画像、安静時fMRI画像を取得し、発症関連CNVが統合失調症の脳の構造や脳内ネットワークの結合性に与える影響を検討する。 平成29年度は、CNV解析を終えた統合失調症患者9名の画像データを取得した。このうち1名は発症に関連するCNV(3q29欠失)持つ患者であった。現在までに蓄積されていた高解像度T1画像データと合わせて、voxel-based-morphometry(VBM)法で解析を行った。発症関連CNVを持つ統合失調症患者8名と持たない統合失調症患者43名で群間比較を行い、発症関連CNVが脳の皮質の灰白質体積へ与える影響について検討を行ったが、有意な差は認めなかった。 来年度以降は、発症関連CNVが統合失調症患者の脳内ネットワークの結合性に与える影響を機能と構造の両面から検討する予定である。その予備的解析として、統合失調症患者と健常者で安静時fMRI画像を用いて、機能的ネットワークの結合性について検討した。その結果、統合失調症患者では視床と視覚野を結合する機能的ネットワークの結合性が亢進しており、その異常の程度が、注意障害と関連していることを示した。この結果は、2017年度日本神経科学大会、2017年度北米神経学会で発表した。また、英文雑誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、病的CNV(3q29欠失)が同定されている統合失調症患者1名を含む9名の統合失調症画像データを取得した。また、撮像時点での陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、知的機能の簡易評価(JART)、薬剤情報や病歴などの臨床データも取得した。今までに蓄積されていた高解像度T1画像とともにvoxel-based-morphometry(VBM)法で解析を行った。発症関連CNVを持つ統合失調症患者8名と持たない統合失調症患者43名で群間比較を行い、発症関連CNVが脳の皮質の灰白質体積へ与える影響について検討を行ったが、有意な差は認めなかった。 予備的解析として、統合失調症患者と健常者で安静時fMRI画像を用いて、機能的ネットワークの結合性について検討した。その結果、統合失調症患者では視床と視覚野を結合する機能的ネットワークの結合性が亢進しており、その異常の程度が、注意障害と関連していることを示した。この結果は、2017年度日本神経科学大会、2017年度北米神経学会で発表した。また、英文雑誌へ投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も引き続きMRI画像データおよび、臨床データの収集を行っていく予定である。また、発症に関連するCNVが統合失調症患者の脳内ネットワークの結合性に与える影響を機能と構造の両面から検討する予定である。機能的ネットワークの結合性については、すでに予備的解析を行っている。 発症に関連するCNVが脳の構造に与える影響については、予測していた結果が得られなかったため、異なるアプローチを用いて検討する必要がある。発症に関連するCNVを持つ患者を1つの群として扱うのではなく、サブグループに群分けしたり、CNVを持つ患者を個別に解析するなどのアプローチを検討する。また、臨床データとの関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
MRI画像解析用のパソコンの購入を予定していたが、購入しなかったため次年度使用額が発生した。H30年度使用分と合わせて、解析に必要な物品を購入する予定である。
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