研究実績の概要 |
研究代表者等は、大規模なゲノムコピー数変異(CNV)解析を実施し、統合失調症の発症に強い影響を及ぼすCNVを多数同定した。CNVが脳の発達に重要な遺伝子の機能に影響をおよぼすことで神経発達障害が起こり、発症に繋がると推測される。本研究では、この結果をもとに3TMRI装置を用いて高解像度T1画像、拡散テンソル画像、安静時fMRI画像を取得し、発症関連CNVが統合失調症の脳構造や脳内ネットワークの結合性に与える影響を検討した。 研究代表者が所属する研究室では、統合失調症患者を対象にアレイCGH法を用いてCNV解析を行い、3q29欠失持つ患者4例を同定した。この患者4例の臨床表現型情報を後方視的に調べた結果、全ての患者で治療抵抗性の特徴を有していた。また、治療抵抗性統合失調症の治療薬であるクロザピンを2例で使用し2例とも効果を認めた。本症例報告は、英文雑誌に掲載された(Psychiatry and Clinical Neurosciences, 2022)。 また、統合失調症患者76名(男:女 = 43:33、平均年齢42.7歳)および健常者80名(男:女 = 43:37、平均年齢40.8歳)を対象とし、安静時fMRIデータを使用し、新しいネットワーク指標であるFunctional connectivity overlap ratio (FCOR)(Bagarinao,et al., 2020)を用いて統合失調症におけるconnector hubの障害を検討した。複数の大規模安静時ネットワークとの結合が変化している脳内voxelを、FCORを用いて調べ、統合失調症では、小脳、中脳、視床などにおいてconnector hubが障害されていることを示した。現在英文雑誌に投稿中である。
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