研究課題/領域番号 |
17K10296
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
元村 英史 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10324534)
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研究分担者 |
前田 正幸 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70219278)
乾 幸二 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 機能発達学部, 部長 (70262996)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 誘発電位 / 誘発磁場 / 変化関連脳活動 / 抑制系 |
研究実績の概要 |
とりまく環境の変化を速やかに捉える変化探知はヒトに備わる基本的かつ重要な情報処理戦略であり、この最初期段階の情報処理過程は極めて時間分解能が高い誘発電位/誘発磁場でしか捉えることができません。本研究は脳波・脳磁図を用い、聴覚情報における変化探知とその抑制機構の視点から統合失調症の神経認知を明らかにすることを目的とする。連続音の音特性を突然に変化(テスト刺激)させると、50~200 ms後に変化関連脳活動が誘発され、更にテスト刺激直前の音刺激をわずかに変化させたプレパルス刺激によってこの活動は減弱されます(プレパルス抑制)。平成29年度は以下の研究を進めました。 1) 健常者を対象として、音圧増加をテスト刺激とし、プレパルス刺激はその直前のクリック音の音圧をわずかに減弱させる刺激パラダイムを用いて変化関連脳活動とその抑制を調べました。プレパルスによって音圧増加に対する変化関連脳活動は減弱し、プレパルスの音圧減弱が大きな程、強い抑制が観察されました。更に次年度以降に行う患者群での測定に向けてテスト-プレパルス刺激間隔や刺激強度の調整を行いました。 2) 連続音として40Hzの純音orクリック連発音を用いることで、変化関連脳活動とともに聴性定常反応(ASSR)も記録できます。このASSRも音特性を変化させると位相は速化してまもなく定常状態に戻ります。この位相の速化が変化させる音特性(周波数・音圧)の物理的変化量に依存することを明らかにしました。ASSRの位相の挙動も定量性の高い変化関連応答の新たな指標になるのではないかと考えます。この二つの研究成果は2017年日本臨床神経生理学会学術大会で報告しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変化関連脳活動とそのプレパルス抑制については、健常者を対象としてパラダイムをほぼ確立することができた。脳磁図を用いた基礎研究では、音特性の突然の変化にもたらされるASSRの位相変化が変化応答の定量性の高い新たな指標となりえることを明らかにできました。
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今後の研究の推進方策 |
変化応答とそのプレパルス抑制について、患者群での測定を開始します。引き続き、脳磁図を用いて、変化応答としてのASSRの位相変化についての基礎的研究を進め、更にその意義を明らかにし、論文発表を行う。聴性定常反応の位相変化の実験系についても当初の予定よりも早く、H30年度後半から患者群での測定・解析を開始する予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
現有機器による実験および解析を行い、また、基礎的研究や実験系の確立を目指した1年であったため、被験者謝金も予定よりも少ない支出となった。繰り越した研究費は本実験に向けた実験環境を整備にあてる。また当初の研究計画経費のそれぞれの費用に加え、研究を遂行する。
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