研究課題/領域番号 |
17K10297
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 恵子 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (90379652)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タウ / 前頭側頭葉変性症 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病や前頭側頭型認知症の一部の患者脳では、大脳萎縮と共に異常なタウタンパク質の凝集がみられる。タウタンパク質の異常リン酸化や折り畳み異常が、タウタンパク質凝集の早期段階であると考えられ、特に複数個のタウタンパク質が凝集して形成されるタウオリゴマーが強い神経毒性を有していると考えられている。近年、神経変性疾患における細胞間の異常タンパク質伝搬が注目されており、異常タウタンパク質が細胞から細胞へ伝搬すると考えられている。前頭側頭型認知症モデルマウスを用いた実験で、タウタンパク質は神経活動依存的に細胞外へ放出され、神経活動が異常タウタンパク質の伝搬に関与していることが示されおり、神経変性と神経活動は密接に関係している。本研究では、異常タウタンパク質、特に神経毒性が強いと考えられるタウオリゴマーが、どのように神経毒性を発揮するか、どのように神経興奮性亢進や細胞から細胞への毒性伝搬に関連しているかに注目した。 前頭側頭葉変性症iPS細胞から神経細胞を作製し、培養上清の評価を行った。前頭側頭葉変性症iPS細胞由来神経細胞において、タウオリゴマーが培養上清中に放出されていることを明らかにし、細胞外タウオリゴマーが神経毒性を来すことを示した。そのことから、タウオリゴマーによるiPS細胞由来神経細胞の神経興奮性の変化を解析したところ、前頭側頭葉変性症の神経細胞障害機序としてタウオリゴマーと神経活動の関連が示唆された。今後は、タウの神経活動関連毒性メカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前頭側頭葉変性症iPS細胞由来神経細胞の培養上清にタウオリゴマーを検出し、神経細胞の生存や神経興奮性に対する評価が可能であったため。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞由来神経細胞を用いて、タウの神経活動関連毒性メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究成果によりタウオリゴマーと神経活動の関連が示され、当初の予定より新たな解析の必要が生じた。平成30年度はタウ毒性と神経活動の関連を多面的なメカニズム解析よって詳細に評価を行うため、当初の計画よりも多くの電極アレイdish等の消耗品費(200万円程度)が必要となる見込みで、平成29年度残額をそれに充てる予定である。
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