研究課題
アルツハイマー病や前頭側頭型認知症の一部の患者脳では、大脳萎縮と共に異常なタウタンパク質の凝集がみられる。タウタンパク質の異常リン酸化や折り畳み異常が、タウタンパク質凝集の早期段階であると考えられ、特にタウタンパク質が凝集して形成されるタウオリゴマーが強い神経毒性を有していると考えられている。神経変性疾患における細胞間の異常タンパク質伝搬が注目されており、異常タウタンパク質が細胞から細胞へ伝搬すると考えられている。前頭側頭型認知症モデルマウスを用いた実験で、タウタンパク質は神経活動依存的に細胞外へ放出され、神経活動が異常タウタンパク質の伝搬に関与していることが示されおり、神経変性と神経活動は密接に関係している。本研究では、異常タウタンパク質、特に神経毒性が強いと考えられるタウオリゴマーが、どのように神経毒性を発揮し、細胞から細胞への毒性伝搬に関連しているかに注目した。前頭側頭葉変性症iPS細胞から神経細胞を作製し、培養上清の評価を行った。前頭側頭葉変性症iPS細胞由来神経細胞において、タウオリゴマーが培養上清中に放出されていることを明らかにし、細胞外タウオリゴマーが神経毒性を来すことを示した。タウオリゴマーによるiPS細胞由来神経細胞の神経興奮性の変化を解析したところ、前頭側頭葉変性症の神経細胞障害機序としてタウオリゴマーと神経活動の関連が示唆され、神経活動依存的にタウオリゴマーの毒性が伝搬している可能性が示された。さらに、これらの細胞表現型をターゲットとして化合物スクリーニングを行い、前頭側頭葉変性症の神経細胞死とタウオリゴマー蓄積を抑制する化合物を同定した。また、センダイウイルスを用いて作成したタウの点鼻ワクチンが、前頭側頭葉変性症モデルマウスに有効であることを報告した。本研究では、タウオリゴマーの伝搬と神経毒性メカニズムに基づく治療アプローチの可能性を明らかにした。
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