研究課題/領域番号 |
17K10299
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大河内 正康 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90335357)
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研究分担者 |
田上 真次 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40362735)
柳田 寛太 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (70467596) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / iPS技術 / プレセニリン / ゲノム編集技術 / アミロイドβペプチド / 患者細胞 |
研究実績の概要 |
iPS幹細胞技術とCRISPR CAS9遺伝子編集技術を組み合わせ、ヒト神経細胞でのアルツハイマー病の分子メカニズムを解明し臨床応用のシーズとなる新たな治療戦略を探索する目的で研究を継続した。平成30年度の成果概要は以下の通りである。 1、平成29年度には、γセクレターゼ活性をより正確に測定する方法を確立したうえで、γセクレターゼ阻害薬とされてきた治験薬のほとんどが、γセクレターゼを阻害するのではなくAβの分泌阻害薬であることを明らかにした。本年度も第2-3相治験で使用された分子標的薬剤が設計通りの機能を神経細胞で発揮するか検討を加えた。その結果、最近臨床治験の進んでいるBACE阻害薬については「γセクレターゼに影響を与えず」、「細胞内にAβの集積を来さない」、という設計通りの作用を発揮していることが明らかになった。この結果は現在進行中の治験薬の作用機序について詳細な検討でも何ら問題がないことを示すものである。 2、CRISPR CAS法を用いたゲノム遺伝子編集技術を用いてアルツハイマー病原因遺伝子プレセニリンKO細胞を作成し、その細胞のAβ産生がどのように変化するか検討した。細胞内Aβ集積の増大、γバイプロダクトの低下、分泌Aβの低下が変異の種類によりパターンは異なるものの一貫して認められた。βAPP遺伝子を削除したiPS神経細胞を作成するなど遺伝子編集技術を用いて患者細胞を病原性の低い神経細胞に変化させることができないかこころみている。βAPP遺伝子を削除したiPS神経細胞を作成したが、現時点では患者細胞特有の性質は見つかっていない。 3、病原性がないと考えられる「βAPP遺伝子を削除したiPS細胞」による「患者細胞への効果、つまり病原性Aβ42低下効果」の検討を行う予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、「iPS幹細胞技術とCRISPR CAS9遺伝子編集技術を組み合わせ、分泌Aβ測定や我々が開発した細胞内γセクレターゼ活性を正確に測定するアッセイ法を駆使 しアルツハイマー病薬剤開発に応用する」については、第3相治験に使用された薬剤の作用点が当初目標と異なることを明らかにした。この手法はうまくいっており、さらに現在治験中のBACE阻害薬について検討し、これらが期待通りの効果を発揮しているという結果を得た。 2、「患者iPS幹細胞に遺伝子編集を行い病原性を著しく低下させたアルツハイマー病患者神経細胞を作成することができるか検討する」については、βAPP遺伝 子を削除したiPS神経細胞の作製に成功した。検討を進めているが、現時点では患者細胞特有の性質は見つかっていない。 3、病原性が低いと考えられる「βAPP遺伝子を削除したiPS細胞」を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
我々はCRISPR CAS9遺伝子編集技術をiPS細胞に応用している。遺伝子編集技術を用いて患者細胞を病原性の低い神経細胞に変化させることができるようになってきたが、技術的に不十分でありさらに実験を続ける。具体的にはβAPP遺伝子を削除したiPS神経細胞の作製が安定してできるように研究を続ける。そして新規作成細胞の性質の検討をさらに行う。 βAPP遺伝子を削除したiPSが「アルツハイマー病モデル」細胞にどのような影響を与えるかまず検討する。 さらには、iPS神経細胞の応用可能性について、認知機能改善に資するかどうかの検討に向かってできる限り近づく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験費用が予想を下回ったため
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