自閉スペクトラム症は長らく遺伝性疾患と考えられてきたため、自閉スペクトラム症の原因遺伝子を明らかにするための試みが多年にわたって、数多くの研究者・研究機関により試みられてきた。しかし、これら多年のたゆまぬ努力にもかかわらず、自閉スペクトラム症の原因遺伝子特定は進んでいない他、しばしば研究者間でも一致した知見がえられないのが現状である。このように、自閉スペクトラム症の原因遺伝子解明が進まない原因の一つは、自閉スペクトラム症の症状が多岐にわたり、しばしばその重症度が独立に変化する点にあると考えられる。さらに、近年の研究から、民族集団間で、自閉スペクトラム症のリスク因子となる遺伝的原因が異なること、さらに同一の遺伝的リスク因子が、民族集団によって自閉スペクトラム症の重症度に真逆の効果を及ぼすケースがあることが明らか にされている。したがって、自閉スペクトラム症の病因を解明するには、遺伝的素因に着目するだけでなく、文化環境を含めた環境的因子、さらには遺伝子と環境との相互作用を検討の対象としなくてはならないと考えられる。そこで、本研究では、日本人とイタリア人を対象とした国際比較研究により、自閉スペクトラム症の遺伝的・環境的リスク因子を解明する。2017年度は、研究計画の立案と、各地での学会参加による情報収集、さらに、海外研究者とのネットワーク作りおよびイタリアでのデータ収集に取り組んだ。2018年度は日本でのデータ収集を本格的に開始した。2019年度は、さらに日本でのデータ収集を行った。
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