研究課題
臨床場面で遭遇した精神症状を有する家族集積症例に対し、頭部MRIを施行したところ正常圧水頭症(NPH)と診断された。NPHはそのほとんどが孤発例であり、わづかながら家族例の報告があるものの、遺伝学的な背景に関しての知見は極めて乏しい。そこで私たちはこの家系においては、何らかの遺伝要因があると仮定し、罹患者と非罹患者に対し次世代型シーケンサーによる全エクソン解析を行ったところ、罹患者のみにCFAP43遺伝子の機能喪失変異を認めた。CFAP43遺伝子の病的変異の報告は、これが世界で初めててあったが、クラスター遺伝子であるCFAP44遺伝子の突然変異は精子の運動能を低下させ、男性の不妊の原因として報告があったことから、私達の症例も類似の機序によって髄液の循環不全が起こりうるのではと推察した。 CRISPR/Cas9を用いてノックアウトマウスを作成し解剖学的、及び組織学的な解析を行たったところ、脳室内の繊毛の形態異常を伴っていることが確認された。ゆえに少なくとも私たちの症例においては、繊毛の機能異常により髄液の循環不全が生じNPHを呈していたのではないかと考えた。今後は、脳外科医や神経科医との共同研究を広げ、症例を集積し、本研究で得られた結果の再現性や普遍性に関する検討を行うこととしている。
すべて 2020 2019
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