研究実績の概要 |
抑うつ性混合状態の定量的評価を行う12項目からなるオリジナルの評価スケール(DMX-12:Depressive Mixed State-12)を開発した。抑うつエピソード例における主な混合症状は過感受性(38.3%)、思考促迫・混雑(36.4%)、転導性(34.4%)、過剰反応(33.8%)、内的緊張(32.5%)であり、探索的因子分析より、1) 内発的な不安定さ、2) 脆弱な応答性、3) 破壊的な感情/行動の3つの下位項目が抽出され、破壊的な感情/行動クラスターが混合性うつ病や混合性の特徴の識別に有用であった。また、DMX-12の総得点や破壊的な感情/行動のクラスター・スコアは、抑うつ症状の重症度や双極性との間に正の相関を認め、年齢との間では負の相関を示した。以上より、双極性を秘めた若年の重症うつ病患者においては、破壊的な感情/行動の増加を中心とした抑うつ性混合状態を呈しやすいことが示唆された(Shinzato et al, Neuropsychiatry Dis Treat, 15, 1983-1991, 2019)。 次に、混合性うつ病および混合性の特徴の識別に関するROC解析を行い、8症状(過剰反応、内的緊張、思考促迫・混雑、衝動性、易刺激性、攻撃性、危険行為、不快気分)の総和スコアが、共通するカットオフ値(≧13)および良好な感度と陰性的中率を以て混合性うつ病(感度74.4%、陰性的中率90.3%)および混合性の特徴(感度87,5%、陰性的中率99.1%)を識別することを示した。したがって、DMX-12より選択された8症状の総和スコアは、混合性うつ病や混合性特徴のカテゴリカル診断との十分な整合性を有し、抑うつ性混合状態のスクリーニング・ツールとして有用であることが示唆された。(Shinzato et al, Brain Sci, 10, 678, 2020)。
|