研究課題/領域番号 |
17K10318
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小林 伸行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20385321)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
本研究はアルツハイマー病(AD)におけるDNAメチル化変化の意義を明らかにすること、また、その原因について明らかにすることを目的としている。本研究では、ADのほか、健忘型軽度認知機能障害 (aMCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)においてもDNAメチル化変化を検討した。その結果、COASYプロモーター領域のDNA メチル化は aMCI、AD、FTD、DLB 全てで変化していた。一方、SPINT1プロモーター領域の DNA メチル化は、aMCI、AD のみで有意な変化を示した。これは、DNAメチル化変化には疾患によって固有のパターンがあることを示唆した。今後、さらに症例数を増やし、検討する予定である。 また、ADの特徴的な病理変化のひとつとして、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が知られる。AβのDNAメチル化への直接的な影響を調べるために、理化学研究所の開発したADモデルマウスであるアミロイドβ前駆体タンパク質の遺伝子変異(APP)ノックインマウスによる検討を開始した。予備的検討の段階だが、6月齢における検討の結果、Aβの蓄積が大きい3重変異を導入した系統では単独変異を導入した陰性コントロールと比較して、有意ではないものの、脳でのCOASYプロモーター領域のDNA メチル化量が高い傾向を認めた。一方、野生型マウスでは24月齢までの加齢において、COASYプロモーター領域のDNA メチル化量の有意な上昇を示さなかった。このことは、Aβの蓄積により、COASYプロモーター領域のDNA メチル化量の増加が引き起こされることを示唆した。 これらの結果はDNAメチル化変化の測定が認知症性疾患の早期診断バイオマーカーとして有用となることを示している。とくに、COASYプロモーター領域のDNA メチル化量の変化は神経変性疾患共通のバイオマーカーとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的検討とともに、動物実験、培養細胞系の実験を開始し、動物実験においては、予備的な検討の段階ではあるが、ADで認められた結果を再現できており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的検討を進展させるために被験者のリクルートを今後も継続する。また、本研究における動物実験では、マウスを加齢させる必要があり、時間を要する。平成30年度では、実験に適した月齢まで成長してくるため、これらの解析を中心に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体を用いた検討において、引き続き被験者のリクルートを継続しており、次年度に繰り越し、まとめて解析を行うこととした。
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