2019年度は最終年度のため、既存試料と合わせ、健忘型軽度認知障害 (aMCI) 22名、アルツハイマー病 (AD) 151名、脳血管性認知症 (VaD) 21名、レビー小体型認知症 (DLB) 13名及び前頭側頭葉変性症 (FTLD) 18名の患者及び、慶應義塾大学 精神・神経科学教室より提供いただいた健常高齢者 (NC) 200名で血液中COASYプロモーター領域の DNA メチル化量をMethylation-sensitive high resolution melting (MS-HRM)法で測定した。その結果、NCと比較して、aMCI、ADでCOASY DNA メチル化量が有意に高かった。また、女性で、COASY DNA メチル化量が有意に高く、性差による影響が確認された。さらに、AD群の中で、心血管疾患 (CVD)を合併した群とそうでない群とを比較するとCVDを合併しない、純粋なADと診断された群で血液中COASY DNA メチル化量が有意に高かった。 また、動物実験において、野生型マウスでは、血液、脳ともに、加齢によるCOASY DNA メチル化量の上昇はなかったが、ADモデルマウスであるアミロイドβ (Aβ) 前駆体タンパク質をコードするAPP遺伝子の変異を挿入したマウスでは、血液のみならず、脳においてもCOASY DNA メチル化量の加齢による上昇を認めた。しかし、脳におけるCOASY遺伝子発現は有意な変化を認めなかった。これは安静時での測定であり、DNAメチル化量の変化で、何らかの刺激による反応性や微小なmRNA変化が起きることが考えられた。 以上のことから、血液COASY DNA メチル化量は脳における変化を反映して上昇し、Aβによる神経毒性を反映する血液バイオマーカーとなることが示唆された。
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