研究課題/領域番号 |
17K10321
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
住吉 太幹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部, 部長 (80286062)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニューロモデュレーション / 経頭蓋直流刺激 / 統合失調症 / 認知機能評価 |
研究実績の概要 |
統合失調症患者に対する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が、神経認知機能(記憶、実行機能、注意力など)の障害を改善することをこれまで見出した。本研究では特に統合失調症患者の社会機能的能力(日常生活技能など)に着目し、tDCSの有用性をより調べる。また、近赤外線スペクトスコピーを用い、精神病症状や社会機能的能力の改善に関係する脳活動の変化を探索する。本年度はtDCSによる精神病症状の変化値と、近赤外線スペクトロスコピー(near infrared spectroscopy, NIRS)で測定される酸素化ヘモグロビンの積分値との関連を解析した。NIRSは、生体組織に対して透過性が高い近赤外光の反射光を測定して血中の酸素化ヘモグロビンを調べ、脳活動を捉える検査である。その結果、左頭頂側頭部の酸素化ヘモグロビン積分値と精神病症状の変化値の間に、有意な相関が示された。以上はtDCSの統合失調症に対する治療効果をNIRS)で予測し得ることを世界で初めて見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究結果から、ニューロモデュレーションの統合失調症への治療効果において、NIRSで測定される酸素化ヘモグロビンがバイオマーカーとなる可能性が示された。本研究成果は、日本時間2018年5月11日に科学雑誌「Journal of Psychiatric Research」誌オンライン版に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果は、tDCSの効果を事前に予測し、合理的な運用につながる。また、薬物療法や認知リハビリテーションなど従来のアプローチとは異なる、患者の社会復帰に向けた新たな治療法の創出にもつながると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者のリクリートのペースが当初計画よりもやや遅い。今後、研究チーム体制のさらなる充実を図り、当該研究を進めて行く。
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