研究実績の概要 |
平成29年度は、当初計画をした行動課題(Implicit Association Test;IAT, Wisconsin Card Sorting Test;WCST, Ultimatum game;UG)をASD群25名、健常群24名に対して施行しデータ収集を行った。さらに新たに採用した空間視点転換課題についてもデータを採取した。IAT(潜在的連合テスト)の結果は、予測通り、自閉症群では、健常群に比較し有意に高いIAT効果が認められ、自閉症群の潜在的な柔軟性気質の減弱、並びに注意制御能力の低下傾向が推測された。また、UG(経済ゲーム)についても、自閉症群において、先行研究同様に不公平分配に対する有意に高い承諾率が認められ、柔軟性に関して有益な洞察を加える事ができた。なおWCSTにおいては、有意な群間差等は、認められなかった。しかし空間視点転換課題では、ASD群における顕著な視点・注意バイアズを示唆する結果が得られた。これらは、既存の関連研究とも矛盾せず、高次の柔軟性との関係を理解する上で、新たな情報源となった。
上記のIATとUGに関する結果は、国際自閉症学会にて発表し(研究発表の項目を参照下さい)、論文化に至った(現在は、投稿中)。そして空間視点転換課題の結果も、現在論文を執筆中である。また、本研究プロジェクトのfMRIデータ解析に用いる同期解析についても、国外の連携研究者と開発を進展させ、これに関する論文執筆も行った。さらに、平成29年度中には、本研究課題の基となった我々の健常群を対象とした柔軟性に関する投稿中の論文が受理された(Tei, et al., Sci Rep, 2017)。平成30年度は機能的MRIにおいても被験者数を増やし、仮説の検証を進めて行く予定である。
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