研究課題/領域番号 |
17K10328
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 尚子 京都大学, 医学研究科, 助教 (20750532)
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研究分担者 |
平方 秀男 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70271509)
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 深部静脈血栓 / 身体合併症 |
研究実績の概要 |
より生体に近い人工流路を作成するために試行錯誤を繰り返したが、観察の系としては80マイクロメートルほどの高さを持つ断面が長方形のマイクロ流路を作成して、カバーガラス越しに観察する方法が最も確実で再現性が高いことがわかった。 健常者より静脈血を採血し、赤血球、血小板、血漿に成分を分離してから再合成して組成を調節したり、向精神薬(抗うつ薬の原末など)を負荷したり、圧、流量、温度を調節したりすることによって、血栓のリスクと推測されている状態を再現し、貧血状態では血栓が生成しにくいことや、血流うっ滞時と通常血流とは違う形態の血栓ができることなどを確かめた。 シリコン樹脂の一種であるPDMS(polydimethylsiloxane)で透明なマイクロスケールの流路デバイスに、静脈のずり速度に合わせて内圧を調整できるように設計した自作のポンプにより、血液が流れる様子を顕微鏡と高速度カメラで撮像できるようにしたものに、更に、蛍光標識によりフィブリン網の生成の経時変化、血小板の形態変化、トロンビン放出の経時変化を記録することに成功した。 トロンビンの生成について可視化に成功した既報は少なく、Visualization of thrombin formation on activated platelets and fibrin formation in venous flow conditionとして国際血栓止血学会(ISTH)で発表予定である。学会そのものは開催地がミラノであることから中止となったが、web発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主に実験を担当していた大学院生が出産後に家庭で育児の協力が得られなくなり、実験になかなか参加できなくなった。また、研究代表者も臨床業務が非常に多忙で、研究時間をとれない状況が続いた。ようやく後半になり、実験成果をまとめようとしていた矢先に、新型コロナウイルス感染症の問題が起こり、本学では早い段階から病院敷地外での実験などを伴う研究を原則休止する用に命令が出たため、データ収集や実験作業ができない状況が続いている。 また、他大学・他施設の研究者との共同実験が行えない状況であることも、本研究においては大きな足枷となっている。
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今後の研究の推進方策 |
実際の患者さんの血液を用いる実験系を考えていたが、感染予防策のため患者さんへの接触が厳しく制限されている状況では計画通りに進めることが困難である。今後も新型コロナウイルス感染の予防策のために厳しく実験作業が制限される状況が続くことが予想されるとなれば、in vitroでの実験系で撮像方法や画像解析手法を開発していく形で研究を進めていかざるをえない。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器購入などのための予算が不足するために、旅費などを自費に切り替えるなどしたため、見かけ上は支出が非常に少なくなった。そのような折りに年度の後半において新型コロナウイルス感染対策のために病院敷地外での研究業務が全て制限されたため、実験室の整備や機器購入などができなくなった。パンデミックがおさまり次第、研究計画や機器の整備を再開する。
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