研究課題
昨年度の報告書で,『今後の研究の推進方策』として「平成31年度の研究については...第1に,認知症の病態理解を進める研究を継続していく」と記載した.その一環として,患者の治療同意能力について評価・検討を行った結果を英語論文として報告した.今までに,認知症者の治療同意能力に関しては既に多数の報告がある(ただし,本邦からの報告は殆ど無い)が,軽度認知障害に関する報告は世界的にも稀である.そこで,健忘型軽度認知障害患者を対象として,治療同意能力評価を実施した.その結果,比較的簡単な診療場面においても,健忘型軽度認知障害患者の3割では治療同意能力を欠いていること,また,医師の臨床判断では,患者の治療同意能力の低下に気付きにくく,たとえ専門医であっても評価が甘くなりやすいことが明らかとなった(文献2).また,昨年度の『今後の研究の推進方策』には,さらに「平成31年度の研究については...第2に,大学病院の精神科病棟に入院した高齢患者を対象とした調査を続けていく.高齢うつ病患者に関して,さらにデータ解析を進め,学会発表および論文発表に繋げていきたい」と記載した.この面についても大きな成果を得て,論文として報告した.具体的には,精神科病棟に入院した60歳以上のうつ病患者52人を対象として,MIBG心筋シンチを施行し,ハミルトンうつ病評価尺度 (HDRS)にて評価を実施した.MIBG正常者は38人・取り込み低下は14人であった.取り込み低下群は正常群と比較して,「不安の身体症状」,「精神運動制止」の得点が有意に高かった.全例を対象として,MIBG心筋シンチの心縦隔比と「不安の身体症状」,「精神運動制止」,「精神運動激越」の得点に相関を認めた.身体症状の訴えが目立つ高齢のうつ病患者は,MIBG取り込み低下を呈する傾向があり,背景にレビー小体病の存在が示唆された(文献1).
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