研究実績の概要 |
令和元年度は昨年度に引き続き、児童精神科外来に通院し、本研究同意が得られた対象児童の登録を引き続き行い、臨床情報および臨床評価尺度の収集を実施した。またこれら対象児童からのゲノム回収および画像撮像を実施した。本年度までにトラウマ体験を有する17名(中央値14歳、男児7名、女児10名)より撮像協力を得た。トラウマ体験のない健常群からの同意取得が困難で、撮像が出来なかったため、トラウマ体験を有する17名の治療前後での比較検討を行う方針となった。体動があった3名を除いた14名の画像データについて日立中央研究所と共同開発した独自のソフトウエアを用いて、拡散テンソル画像(DKI)よりMK画像を、拡散尖度画像(DTI)よりFA, MD画像を作成した。またFSLのTBSS(tract-based spatial statistics)を用いて、FA画像の解剖学的標準化を行い、作成した平均FAスケルトン画像を用いて個々の症例のMK, FA, MD画像を投影し、トラウマ治療前後での平均値を比較した。結果、白質線維のMK(mean kurtosis)、KR(radial kurtosis)において、治療前より治療後の方が有意に上昇していた。またANTs (Advanced Normalization Tools)によるFA画像とb0画像を用いた画像の解剖学的標準化の逆変換を利用し、公開アトラスを用いて個々の脳空間上で 大脳基底核の平均MK, FA, MD値を自動計測したところ、大脳白質の平均値は、治療前より治療後においてMKは有意に上昇していた。 なお画像撮像に平行してゲノム採取を行っていたが、母数が少ない為、関連性の解析は達成できなかった。
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