目的:我々は、日本人うつ病合併妊婦を対象とした周産期における非薬物療法の有効性を明らかにするため、無作為化比較試験にて周産期における心理教育、対人関係療法によるうつ症状の治療的効果を検証した。 方法:兵庫医科大学病院にて周産期管理を行ううつ病合併妊婦のうち、本研究の主旨に対する理解と同意が得られた者に対し、妊娠期において無作為に心理教育実施群、対人関係療法実施群に割付け、各16回の介入を実施した。同様に研究に対する同意が得られ、年齢を一致させた精神障害の生涯罹患のない健常妊婦を対照群とした。評価として、自己記入式評価尺度Edinburgh Postnatal Depression Scale、Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、Self-Rating Depression Scale (SDS)および精神科医による客観的評価を、介入前、介入後、産後1週間、産後1か月にて実施し、各評価尺度のスコアの群間比較、経時的変化の評価を行った。 結果:3群間の年齢、出産回数、結婚歴、喫煙、飲酒、教育年数、勤務形態はいずれも有意差はみられなかった。脱落率は各介入群30%で有意差は認めなかった。介入群の比較では対人関係療法群において介入後のHADS-D(p=0.002)、SDS(p=0.01)、PHQ-9(p=0.002)で有意な改善を示した。健常群と比較し対人関係療法群、心理教育群とも、妊娠合併症や児の合併症の発生率は健常群との有意差を認めなかった。 考察:日本人うつ病合併妊婦のうつ症状の改善に対人関係療法が有効である可能性が示唆された。一方、不安症状のスコアは対人関係療法群、心理教育群ともに改善が得られており、いずれの介入も有効である可能性が考えられた。
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