研究実績の概要 |
2011年(平成23年)4月~2015年(平成27年)3月に当施設で外科的に切除された原発性肺腺癌症例のうち、当施設で撮影されたCT画像があり、最大径3cm以下で薄層CT上pure GGNもしくはpart-solid GGNを呈する病変を研究対象とした。 対象病変となる肺腺癌の組織学的亜分類は、病理診断専門医が改めて2015年WHO分類に基づき診断を行った。CT画像はPACSから電子媒体にコピーし、定量解析は放射線診断専門医が画像解析専用PC上で画像解析ソフトウエアを用いて1mmスライスの薄層CTで腫瘍を全スライスに渡ってコンツーリングし、各ボクセルのCT値を3次元的に抽出し、種々の定量的指標を算出した。算出したデータから、上皮内腺癌~微少浸潤性腺癌の群と浸潤性腺癌の群の2群間における差を統計学的に解析した。 単変量解析では、2群間にすべての検討項目で有意差を認め、後者(浸潤性腺癌群)が前者に比して腫瘍体積、腫瘍重量、腫瘍の平均CT値、分散、entropy、percentile CT値(10th, 25th, 50th, 75th, 90th, 95th)が有意に高く、残りの因子は有意に低かった。多変量解析では90th percentile CT値とentropyで有意差を示し、90th percentile CT値とentropyに関してROC解析を行ったところ、2群を非常に良好に鑑別することができた。 予後が大きく異なる上記2群間の鑑別は臨床的に重要であり、本研究は薄層CTを用いた定量的画像解析がその鑑別において有用であることを示した点で有意義であることから、この成果を英語論文として発表した。 さらに、肺腺癌の薄層CT所見における定量的指標と術後5年無再発生存率との関連を検討したところ、定量的な指標が視覚的な指標より再発予測能が有意に高いという結果を得た。肺腺癌における定量的画像解析の有用性を支持する結果と考え、その成果を学会で報告した。
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