研究課題
癌抑制遺伝子P53の変異は様々な癌で確認されており、肝細胞癌の分子遺伝子分類においても高悪性度ならびに予後不良の指標とされている。今回は肝細胞癌におけるP53の変異に着目し、画像所見および臨床所見、病理所見、予後の解析を行った。外科的切除された肝細胞癌173結節を対象とし、P53免疫染色にて核発現を示す28結節と発現が認められない145結節とに分類した。P53変異型肝細胞癌では非変異型と比較して、血清AFP、AFP-L3分画、PIVKA-IIの値がいずれも有意に高値であり、組織学的に低分化型が多いことが明らかとなった。画像所見については、P53変異型肝細胞癌ではdynamic CT動脈相での造影不良域、腫瘍内の拡張した動脈構造、EOB-MRI肝細胞相における腫瘍/肝信号強度比の低下、腫瘍辺縁の不整像、腫瘍周囲の淡い低信号領域が有意に認められた。多変量解析では、腫瘍内の拡張した動脈構造とEOB-MRI肝細胞相における信号強度比の低下がP53変異と有意な相関を示した。またP53変異型肝細胞癌は非変異型と比較して、術後生存率の有意な低下が認められた。以上の結果より、予後不良な亜型であるP53変異型肝細胞癌の推測に上記のような画像所見が有用と考えられた。肝細胞癌の分子遺伝子発現を画像診断により推測することが可能となれば、侵襲的な組織採取を行わずに悪性度や予後を推測することにつながる。このような手法(radiogenomics)は今後の個別化診療において、重要な役割を果たすものと考えられる。
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European Radiology
巻: Epub ahead of print ページ: -
10.1007/s00330-020-06687-y