研究課題/領域番号 |
17K10356
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
市川 勝弘 金沢大学, 保健学系, 教授 (40402630)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | computed tomography / dual energy / phantom / CT number / soft tissue / blood |
研究実績の概要 |
デュアルエネルギーX線コンピュータ断層撮影 (DECT)のX線エネルギー依存性に対応した水等価及び人体組織等価ファントムは現在存在しないことから,数種の安定した物質(ポリプロピレン,アクリル,ハイドロキシアパタイトなど)を利用して,正確に人体と等価なエネルギー依存を示すファントム物質を本研究課題では開発する. 平成29年度では,NIST(National Institute of Standards and Technology)にて示される人体臓器(組織)のうち肝臓,血液についてエネルギー特性をデータテーブル化し,等価物質の作成に利用した.まず水溶液の作成に着手し,エネルギーの増加によってCT値が上昇する食塩水と,逆にCT値が低下するショ糖水のそれぞれの化合式から,エネルギー特性を算出した.目的組織(肝臓,血液)のエネルギー特性からこれらと等価となるような混合比率を算出できるアルゴリズム(シミュレーションソフトウェア)を考案し,計算した比率にて水溶液を作成した.これを樹脂製バイアルに封入し,直径20 cm円筒型水ファントム内に固定して,DECTが可能な2管球方式マルチスライスCT装置,シーメンス社製Somatom Definition Flash(所属大学の附属病院に設置)にてスキャンした. 40~200 keVの仮想単色画像を再構成し,CT値を理論値と比較した結果,±2 HUの許容誤差に対して,最大で+5HUと誤差が高かった.用いた混合比率とCT値差から,補正混合比率を算出して水溶液を作成し,CTスキャンおよび誤差測定を計測した.結果的に5回の補正操作により最終的に最大誤差が-1.5 HUとなるまで等価性を高めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画における水溶液による組織等価物質の作成には成功し,結果的に最大誤差が-1.5 HUとなるまで等価性を高めることができた.また組織混合率の算出と補正アルゴリズムも確立された.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降の計画では 固形物質の作成を行うことになっている.考案した混合比率計算アルゴリズムにより実際のファントムに適した固形物質を作成するための混合比率を算出する.固形物質には混練が可能な樹脂を選択し,微細粉末化が可能な物質(ハイドロキシアパタイトなど)も利用可能である.対象の人体臓器(組織)は,NIST によって公表されている血液,肝臓,脳実質,筋肉,乳房,及び脂肪とする.混合比率を算出した後ファントムメーカに製作依頼する.製作された物質をDECTでスキャンし,CT値誤差を測定する.測定誤差から補正混合比率を見積もり製作を再依頼するという,繰り返しを平成30年度内に行い,±2HUの許容誤差内に入るようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
以前から所有していた研究機器が故障し精査し研究課題の遂行のために修理を余儀なくされた.この修理費により購入予定の機器の予算が不足して購入できなかったため,次年度使用額が生じた.平成30年度は,開発物質の製作依頼,学会参加に係る経費,およびその他の経費と合わせると予定額をやや超えることが予測されるため,それに充当する予定である.
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