研究実績の概要 |
実験1-1)として行った基礎実験では、20mlシリンジで吸引した炭酸生食には約23.5mlの炭酸ガスが溶解していた。しかし、4Frカテーテルから20mlの炭酸生食を注入したところ、8.5mlの炭酸ガスが発生した。 実験1-2)in vitro評価として、血管モデルを用いたDSAでの評価では、細血管では、炭酸ガス、炭酸生食ともに描出が劣るものの、中血管、大血管では炭酸生食は、炭酸ガスと比べて、同等もしくは良好な血管描出能を有しているものと考えられた。 実験2)in vivo評価として動物実験を行った。対象はウサギ10羽。大腿動脈をカットダウンして、4Frショートシースを挿入、4Frカテーテルから上部大動脈(腹腔動脈レベル)、中部大動脈(腎動脈レベル)、さらにシースより下部大動脈(大動脈分岐部レベル)を炭酸生食5ml、炭酸ガス5mlを用いて、それぞれ5羽ずつ造影した。実験1と同様の方法で血管造影能を評価し、炭酸生食と炭酸ガスを比較した。血管造影能は、炭酸生食では上中下部でそれぞれ、52.1 ± 17.3, 56.3 ± 12.9, 50.1 ± 24.0 であった。一方、炭酸ガスではそれぞれ、66.5 ± 16.7, 77.3 ± 15.4, 87.3 ± 5.6 であった。炭酸生食を用いた血管造影は、炭酸ガスに比べると、造影能は劣っていた。 動物実験で炭酸生食の造影能が炭酸ガスに比べて劣っていた理由は、①炭酸生食の注入時にウサギの体動が多かったことが考えられる。これは炭酸生食の発泡過程で血管刺激が生じるためと思われた。また、②5mlの炭酸生食から発生する炭酸ガスの量が少ないことが原因と思われた。実験1-1の結果を考慮すると5mlの炭酸生食からは約2.1mlの炭酸ガスが生じており、対照となる炭酸ガス5mlの半分以下であることも原因であると思われた。
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