研究実績の概要 |
研究の目的:放射線治療計画では、コンピュータ上でCT画像の病巣ターゲットや正常組織を輪郭抽出する。放射線治療装置からのX線照射量は、体表からターゲットに至る各組織のCT値と厚みによる減衰から算出する。ターゲット近傍に金属があるとCT画像にアーチファクトが出現するが、輪郭抽出が不確実になる上、実際と異なる減衰計算結果となり問題であった。近年開発されたdual energy CTは、単電圧のX線で物質の減衰率差を計算可能であり、金属アーチファクト抑制ソフトも開発されている。 本研究は1)金属アーチファクトが治療計画線量計算に及ぼす影響を定性的・定量的に検討し、2)dual energy CTの治療計画への利用可能性を検討することを目的とする。歯科充填物や髄内釘等体内金属が存在する場合の放射線治療計画における、輪郭抽出や線量計算精度の向上が期待できる。 平成29年度の計画:最適な単エネルギーX線の決定 金属アーチファクトは、連続エネルギースペクトラムである通常のX線CTで撮像する場合に発生する。 dual energy CTの金属アーチファクト抑制ソフトでは、最適な単エネルギーX線により、金属アーチファクトの発生しにくい画像を作成しうる(Meyer E, Radiation Physics 2012)。当大学医学部附属病院設置の dual energy CT (CT Discovery 750HD scanner, GE Healthcare, Milwaukee, USA) を用いる。相対電子密度が既知のCTファントムを、X線エネルギーを複数変更して撮影する。金属アーチファクトが最も減弱する、最適なエネルギー条件を決定する。相対電子密度が既知のCTファントムに、体内留置金属を模したファントムを挿入してCT撮影実験を行う予定であった。しかし、本実験で想定している歯科充填物、血管内ステント、髄内釘など体内留置金属は通常合金であり、正確な原子密度が不明である。
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