研究課題/領域番号 |
17K10366
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
萩森 政頼 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (40446125)
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研究分担者 |
川上 茂 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20322307)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内用放射線治療薬剤 / トリプルネガティブ乳がん / 標的指向化リポソーム / NQO1 / Mucin-16 / RGD |
研究実績の概要 |
本研究では、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の内用放射線治療を目的に、放射性薬剤をリポソームに封入することによって高い治療効果が期待できるナノキャリアの開発を行っている。 前年度において、NQO1選択的阻害剤であるES936をベースにした放射性ヨウ素標識体のp-ヨードフェニル基の脱離を抑えるために、フェニル基上にメトキシ基やアルキル基を導入した誘導体を合成した。本年度ではまず、ES936誘導体の125I標識体を用いて代謝安定性の評価を行ったところ、メトキシ基やメチル基を持つ125I標識体において、NQO1に対する親和性を保持したままで代謝安定性が向上することがわかった。ヒト肺がん細胞A549を用いた検討においても、メチル基を持つ誘導体は、メチル基を持たない誘導体に比べて高い細胞内取り込みを示した。また、マウス体内動態の検討において、メチル基を持つ125I標識体では甲状腺や胃での集積は認められず、脱ヨウ素による分解は少ないことがわかった。テロメラーゼ阻害剤であるBIBR1532をベースにした125I標識体については、リポソームへの封入が可能か検討を行ったところ、高い封入率で製剤化できることがわかった。 TNBC指向性を持つリポソームについては、前年度に選択したMucin-16に対して高親和性を有するペプチド (EVQペプチド) の機能性について評価した。EVQペプチドへの125I標識部位として、N末端と中間部位を選択し2種類の125I標識EVQペプチドを合成した。マウス乳がん細胞4T1を用いた検討において、EVQペプチドは高い細胞取り込みを示した。また共焦点レーザー顕微鏡による検討において、細胞内に集積していることが認められた。標的指向型リポソームについては、インテグリンαvβ3標的性のRGDをモデルリガンドして評価を行い、高い標的指向性を示すリポソームの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度についてもほぼ研究計画通りに研究を遂行した。NQO1標的放射性薬剤の合成については、合成した125I標識体において高い代謝安定性を示す誘導体の開発に成功した。テロメラーゼ標的放射性薬剤については、リポソームに封入が可能か検討を行い、高い封入率で製剤化できることを示した。TNBC指向性を持つリポソームに用いるリガンド(EVQペプチド) については、EVQペプチド自体の機能性を評価するために125I標識体を作製し、細胞を用いた検討において標的であるMucin-16を介して機能することが認められた。標的指向型リポソームについては、広く利用されているRGDペプチドをモデルリガンドとして用い、高い標的指向性を有することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策:リポソームに搭載する放射性薬剤については、ほぼ合成が終了しているため、次年度ではインビトロおよびインビボ実験において腫瘍集積性等の評価を行う。TNBC指向性を持つリポソームについては、RGDペプチドを用いたリポソームにおいても(SG)nスペーサーの有効性を実証できたことから、TNBC指向性のEVQペプチドを用いて標的指向型リポソームの開発を進める。EVQペプチド修飾リポソームを製剤化後、RIまたは蛍光を用いたインビトロおよびインビボ実験において、その有用性を明らかにし、TNBCに対する内用放射線治療薬剤の確立を目指す。
次年度の研究費の使用計画:主に物品費として、試薬、溶媒、ガラス器具、細胞、動物等を計上している。また、学会発表や情報収集のための旅費や論文投稿に必要な経費を計上している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に注文していた物品が返品となったため、次年度使用額が20,790円となった。翌年度については、次年度使用額が20,790円と翌年度に請求した助成金と合わせて、計画的に研究費を使用し本研究を遂行する。
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