研究課題
[11C]メチオニン(MET)合成の簡便法である[11C]ヨウ化メチル用いたオンカラム標識法と新たに開発するイオン交換固相抽出による製剤化法をリンクさせ、合成の迅速・効率化を実現し、[11C]METの標準的製造法として確立することを目的とする。アルカリ・エタノールの混液から成る基質反応液を用い、C18カートリッジ上で[11C]ヨウ化メチルで反応させた後、水で溶出したC18の標識反応液を塩基性条件下(pH 9)で、Oasis MAX(逆相・イオン交換ミックスモード固相)に導入することで、[11C]METの効率的なトラップが達成され、続く水洗浄を経て、リン酸緩衝液(pH 6.5)で溶出することで安定に注射剤を得ることができた。一方で、C18とOasis MAXに比較的高レベルの残留放射能が確認されており、今後、保持されている成分の分析を実施する。本法と固相抽出を用いない従来法で得られた注射剤の品質をHPLC法で分析した結果、反応液に添加した少量のエタノール、反応基質由来の不純物が全て注射液中に混入する従来法に対して、本法では、基質由来の不純物が1/2以下に減少し、特に、ヨウ化物、エタノールが完全に除去されていた。また、各種品質検査を実施した結果、PET薬剤としての要件を概ね満たしており、選択したイオン交換固相は[11C]MET精製に効果的に機能することを確認した。本法は作業者の大幅な負担軽減、放射性揮発成分、エタノールの除去、不純物の低減に有効であり、容易に自動化が可能でPET薬剤GMPへの適応性が高く、今後[11C]METの標準的製法になりうる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
[11C]METの合成において、[11C]ヨウ化メチル用いるオンカラム標識法の反応条件を最適化し、イオン交換固相抽出によって、[11C]MET を単離・精製し、製剤化する方法が確立された。基質反応液の組成と反応効率および基質由来の不純物の生成との関連を系統的に調べ、固相抽出の工程を不純物と製剤の分析結果に基づいて効率化し、得られた製剤について、各種品質試験、光学異性体および夾雑物の測定を行い、製法の妥当性の評価をした。以上より、初年度の計画に基づいて概ね順調に進展しているものと考える。
[11C]METのD-異性体(鏡像異性体)含有率を低減(10%以下)するため反応溶液組成などの最適条件を検索する。さらに、PET薬剤合成装置メーカーと共同でディスポーザブルカセットの適応を基本とし、さまざまな製造工程に対して柔軟に対応できる自動合成装置を開発する。2年度目は自動合成装置が完成する前に、使い捨て部品を組み合わせてカセット化し、少量の放射能を用い手動で操作して合成を行い、本合成法が適応可能かどうか検討する。自動合成装置の製作は、[11C]METの製造工程に基づき、効率的に機能する装置を設計し、試作機を完成させる予定である。
炭素11ターゲット容器の製作の費用が、最初の見積もりよりも低くなったため、また、発注した試薬がメーカ側の品質管理機器の不具合により、年度内に納品されなかったため、次年度使用額に差が生じた。残額については合成装置試作のための部品購入費用に充てる予定である。
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