研究課題
●XCounter社製のActaeonというCdTeアレーを購入し,ヨウ素(I)やガドリニウム(Gd)の造影剤を使ったKエッジ撮影を試みた。フォーカスサイズが直径0.1mmのⅩ線管を用い,Ⅹ線源とCdTeアレーとの距離を1.0mに調整した。Ⅹ線フォトンのカウントレートを増し,平均化された画像を用いることにより,画質の向上をはかった。●I-Kエッジ撮影では管電圧を60kVに設定し,スレッショルドエネルギーを10と33keVに設定した。よって撮影に用いたエネルギーレンジは10-60そして33-60keVであった。犬の心臓の撮影ではエネルギーレンジを33-60keVに高めることにより,心筋のグレイ値濃度が増加し,冠動脈が高コントラストで撮影できた。空間分解能はピクセルサイズと同等で,0.1×0.1mmであった。●Gd-Kエッジ撮影では管電圧を80kVに調整し,スレッショルドエネルギーを30と50keVに設定した。よって撮影に用いたエネルギーレンジは30-80そして50-80keVであった。ウサギ頭部の撮影ではエネルギーレンジを50-80keVに高めることにより,筋肉の濃度が増加し,鼻の微小血管が高コントラストで撮影できた。また200フレームの画像を平均化することにより,画像の粒状性が著しく改善された。●CdTeアレーとⅩ線源の間にターンテーブルを取り付けて,デュアルエネルギーⅩ線CT(DE-CT)スキャナーを構築した。一般撮影と比較して,KエッジCT撮影では,濃度の最大と最小の値は逆転するが,一般撮影と同等の結果が得られた。3D画像の構築も容易で,空間分解能は0.1×0.1×0.1mm程度であった。
2: おおむね順調に進展している
●29年度における上記研究成果に加えて,CdTeアレーを使った高速撮影を行った。シングル撮影モードではX線フォトンをカウントできないが,高線量率のX線を用いて高速撮影が可能である。ここでは撮影距離が1.0m程度で,最大1kfpsの高速連続Ⅹ線撮影を行った。●購入したActaeonというCdTeアレーにはスレッショルドエネルギーを1keVのステップで選択できるプログラムが添付されており,あらためてDE撮影のためのプログラムを作成する必要はなかった。Actaeonにおける個々のピクセルには電荷有感増幅器とDEカウンターがついているが,電子回路が不明であるため,CdTeアレーとしてのエネルギー分解能を測定することは難しかった。●IやGdの造影剤を使ったKエッジ撮影ではスレッショルドエネルギーを変化させることにより,画像のコントラストは変化を確認した。しかし,最大エネルギーが一定であるため,大きなコントラスト変化は得られなかった。また,添付されているエネルギーサブトラクションプログラムは低エネルギー画像から高エネルギー画像を単純に差し引く方式であるため,画像に粒状性が現れ,改良が必要であった。●CdTeアレーを使ったDE-CT撮影では,0.1×0.1×0.1mm程度の空間分解能が得られ,3次元表示は容易であったが,高コントラストのKエッジCT画像を得るにはフォトンカウント・エネルギーサブトラクションが必要であった。総じて当初の計画は,ほぼ予定通りに遂行され,研究成果に関する複数の論文もすでにアクセプトされている。
●CdTeアレーを使った2倍拡大撮影: 空間分解能の向上を目指して,0.1mmフォーカスX線管により2倍拡大撮影を行い,約0.05×0.05mmの空間分解能を実現する。また,2倍拡大によるエンボス・エネルギーサブトラクションも試みる。●高速エネルギー弁別検出器の基礎研究: CdTe,LSO-MPPC,LSO-PMT,YAP(Ce)-micro-PMTなどの検出器に用いる複数の小型の高速増幅器を試作する。検出器はBNCコネクターにより増幅器モジュールに取り付けられる。次に,Am241から発生するγ線を用いてエネルギー分解能を測定し,カウントレートの向上をはかる。一般 にマルチチャンネルアナライザー(MCA)は1μs以上のパルス幅を有するイベントパルスの波高分析に利用されるので,MCAでの測定値は実際の波高値よりも小さい値になる。よってDE撮影の場合にはパルス幅に合わせてエネルギー補正を行う必要がある。一方,高速コンパレーターは100ns以下の短パルスに十分に対応できるので,エネルギー補正の必要はほとんど無い。●フォトンカウント・エネルギーサブトラクションプログラムの構築: スレッショルドエネルギーが異なる2 ファイルのプロジェクションデータを差し引いて画像再構成するプログラムを作成する。●CdTeアレーによるDE-CT撮影: 2値のスレッショルドエネルギーを設定して平均エネルギーの異なる2ファイルの断層像を撮影し,フォトンカウント・サブトラクションにより準単色撮影を行う。よって,IとGdのKエッジCTでは, それぞれ33~60keVと50~100keVのフォトンを用いることになる。これら2種のKエッジ撮影法を用いてIやGdの造影剤入りファントムを撮影し,画像コントラストを確認することで,スレッショルドエネルギーの設定が正しいかどうかを見極める。
科研費を申請した当初は高価なCdTeアレー検出器を購入する予定だったが,2016年度後半に別予算で検出器を購入することができた。よって,検出器を購入する予算が余ったことから,2018年度予算として使うことにした。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件)
Int. J. Med. Phys. Clinical Eng. Radiat. Oncol.
巻: 7 ページ: 35-46
Rad. Phys. Chem.
巻: 130 ページ: 385-390
Appl. Radiat. Isot.
巻: 130 ページ: 54-59
Med. Imag. Inform. Sci.
巻: 34 ページ: 126-131
巻: 6 ページ: 266-279
Radiat. Meas.
巻: 107 ページ: 94-101
SPIE
巻: 10393 ページ: 103930U-1-6
巻: 10393 ページ: 103930J-1-6
Ann. Rep. Iwate Med. Univ. Center Lib. Arts Sci.
巻: 51 ページ: 1-5
巻: 51 ページ: 7-12