研究課題/領域番号 |
17K10376
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
松本 伸行 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (60300951)
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研究分担者 |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 准教授 (20295546)
安西 尚彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70276054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 造影剤 |
研究実績の概要 |
ヨード性造影剤による造影X線検査は診断の正確性を大きく高め、最も重要な検査の一つである。ヨード性造影剤はその全てが腎臓より排泄され、高齢者をはじめとする腎機能障害例では使用できない。我が国の人口高齢化を考えると、腎障害を軽減した新規X線造影剤の開発は喫緊の課題と言える。一般に、主要な薬物代謝経路は尿、および胆汁とされる。そこで我々はヨード性造影剤の基本骨格に肝細胞特異的な受容体に認識される構造を付与することで、胆汁から排泄される機能を付与することを想起した。 我々は、造影剤の基本構造に、末端にガラクトースをもつ3通りの側鎖を一つ配した三つの化合物(KBT、MEG-1、MEG-2)を作成した。これらを用い、肝がん細胞株HepG2を用い、肝細胞特異的に発現しているアシアロ糖タンパク受容体を介した取り込み阻害実験を行ったところ、KBT、MEG-1、MEG-2のいずれも放射性ラベルしたリガンドの取り込みを競合的に阻害することが示された。また、受容体を持たない膵がん細胞株Panc-1を用いて同様の実験を行い、この効果が肝細胞特異的であることが示された。次に、MEG-1を用いて動物実験を行った。具体的には52mgのMEG-1(ヨードとして24mg)をPBSに希釈し、マウスの尾静脈より注入し、経時的にCTを撮像した。1時間後の画像にて膀胱内と腸管内への造影剤排出を認め、肝腎二系統からの造影剤排泄が確認された。MEG-2でも同様の効果をすでに確認済みである。 以上の結果から、X線造影剤の基本構造にガラクトースを末端に持つ側鎖を付与することで、肝細胞特異的アシアロ糖蛋白受容体から肝細胞に取り込まれ、肝腎二系統より排泄される機能を持たせられることが実証された。我々の実験結果は側鎖の構造が異なっても、末端にガラクトースが配置されることにより同様の機能が付与されることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線造影剤の基本構造にガラクトースを末端に持つ側鎖を付与することで、肝細胞特異的アシアロ糖蛋白受容体から肝細胞に取り込まれ、肝腎二系統より排泄される機能を持たせられることを証明した。現在特許出願準備中である。我々の実験結果は側鎖の構造が異なっても、末端にガラクトースが配置されることにより同様の機能が付与されることを示している。 現時点で実験的に証明できているのは「X線造影剤の基本構造にガラクトースを末端に持つ側鎖を1つ付与することで、肝細胞特異的アシアロ糖蛋白受容体から肝細胞に取り込まれ、通常は腎臓のみから排泄されるX線造影剤に、肝腎二系統より排泄される機能を持たせられること」である。 実臨床への応用を念頭におくと、ヨードアレルギーなどの副作用低減の観点から、一般的なヨード性造影剤と同様に、3つの側鎖を付与することが望まれる。側鎖を3つ付与した造影剤候補化合物の検討データを追加することにより、実現性が大きく高まることになる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、側鎖を3つ付与した造影剤候補化合物を合成中である。今後これを用いて以下の検討を行なっていく予定である。 1)側鎖を3つ付与することにより、側鎖が1つの場合と比較して、肝細胞への親和性が高まること。(In vitroでの検討) 2)側鎖を3つ付与した化合物が、1つの場合と同様に胆汁、尿として腸管、膀胱のそれぞれへ排泄されること。(In vivoでの検討) 3)分子量が大きくなることで新たな副作用が出現しないこと。(In vivoでの検討)
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次年度使用額が生じた理由 |
現時点で「X線造影剤の基本構造にガラクトースを末端に持つ側鎖を1つ付与することで、肝細胞特異的アシアロ糖蛋白受容体から肝細胞に取り込まれ、通常は腎臓のみから排泄されるX線造影剤に、肝腎二系統より排泄される機能を持たせられること」は実験的に証明できた。今後の実臨床への応用を念頭におくと、ヨードアレルギーなどの副作用低減の観点から、一般的なヨード性造影剤と同様に、3つの側鎖を付与することが望まれる。 現在我々は側鎖を3つ付与した造影剤候補化合物を作成中で、次年度はこれを用いて同様の実験を行って検討データを追加していく計画である。
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