研究実績の概要 |
ヨード性造影剤による造影X線検査は診断の正確性を大きく高め、最も重要な検査の一つである。ヨード性造影剤はその全てが腎臓より排泄され、高齢者をはじめとする腎機能障害例では使用できない。我が国の人口高齢化を考えると、腎障害を軽減した新規X線造影剤の開発は喫緊の課題と言える。一般に、主要な薬物代謝経路は尿、および胆汁とされる。そこで我々はヨード性造影剤の基本骨格に肝細胞特異的な受容体に認識される構造を付与することで、胆汁から排泄される機能を付与することを想起した。 これまで我々は、造影剤の基本構造に、末端にガラクトースをもつ3通りの側鎖を一つ配した三つの化合物(RYO-1、MEG-1、MEG-2)を作成し、これらがin vivo, in vitroにおいて、肝細胞特異的アシアロ糖蛋白受容体から肝細胞に取り込まれ、肝腎二系統より排泄される機能を持たせられることを示してきた。 上記に加え、我々はRYO-1と同じ側鎖を三つ持つRYO-2、MEG-2と同じ側鎖を三つもつMEG-4を新たに合成した。 これらを用いて、アシアロ糖タンパク受容体を介した取り込み阻害実験を行ったところ、いずれも放射性ラベルしたリガンドの取り込みを競合的に阻害することが示された。さらにRYO-1とRYO-2、MEG-2とMEG-4を比較して、いずれの化合物においても側鎖が三つある場合で、より強い取り込み阻害効果が認められた。また、マウスの尾静脈からRYO-2、MEG-4を投与してCTを撮像すると、いずれの化合物も膀胱内、腸管内へ排泄されることが確認された。 以上の結果から、今後の臨床応用を念頭に考えた場合には、アシアロ糖蛋白受容体に認識される側鎖は一分子あたり3個の側鎖が浮揚されている化合物が望ましいと考えられた。
|