研究課題
p38は炎症性サイトカインや細胞に対するストレスの刺激により活性化することが知られている。様々な疾患における発症メカニズムの一つに、p38の異常活性化後、アポトーシスの誘導やサイトカインの異常産生等が生じ、虚血性疾患、がん、自己免疫疾患(リウマチ性関節炎など)アルツハイマー型認知症、不安定プラークの形成等の疾患発症に重要な役割をしている。p38の活性化は、病態発生の早期段階に起こり、その活性上昇把握は、様々な疾患の早期発見に繋がり、p38活性変化をPET、SPECTで把握することで、これら疾患を早期に診断可能と期待される。本研究では、構造活性相関を基にピリミジノピリドン構造を母核とする新規放射性ヨウ素標識プローブFICを設計・合成した。FICはp38α阻害活性を有することを確認した。続いて、放射性ヨウ素標識をトリブチルスズ基を有する前駆体から、放射化学的収率95%以上、放射化学的純度99 %以上で目的物を得た。テレピン油を筋肉内投与した炎症モデルマウスを用い、FICの炎症組織を含む各組織へのFIC生体内分布を調べた。125I-FICは速やかな組織移行性と血中クリアランスを示し、投与30分後において高い炎症組織への集積を示した。また、FICはテレピン油処置2日後の炎症組織への集積は処置8日後と比べに約7倍高い値を示し、処置2日後の炎症対血液比は約8と良好な値を示した。また、p38α阻害剤の前処置によりFICの炎症への集積は有意に抑制され、p38αへの選択的な結合を介して炎症組織に集積することが示唆された。甲状腺への低集積性から高い生体内安定性を示唆した。これらの基礎検討の結果を既報のFDGとの結果で比較したところ、放射性ヨウ素標識FICは炎症イメージング剤としてFDGに匹敵する結果を得ており、当初の目標であったポストFDGを目指した新規放射性薬剤の開発を達成したと考える。
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Ann Nucl Med
巻: 33 ページ: 333-343
10.1007/s12149-019-01341-0.