研究課題/領域番号 |
17K10380
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研究機関 | 大阪物療大学 |
研究代表者 |
勝田 稔三 大阪物療大学, 保健医療学部, 教授 (40379722)
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研究分担者 |
野口 敦司 大阪物療大学, 保健医療学部, 教授 (10716202)
丹喜 信義 大阪物療大学, 保健医療学部, 助教 (60441573)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Computed Tomography / ガフクロミックフィルム / 線量分布 / 三次元線量計測 / 半円柱ファントム |
研究実績の概要 |
ガフクロミックEBT2に紫外線Aを照射し,反応層の厚みの不均一が原因となる濃度不均一の補正方法を開発した.しかしながら,最適な紫外線の照射量が決定されていない.そこで放射線線量計測用フィルムであるガフクロミックEBT2フィルムに対しての有効な紫外線波長とその適正照射量である照射強度を時間にて求めた。 紫外線蛍光灯を用い,ピーク波長360 nmの紫外線Aが最も反応が良い結果を得ていた.紫外線のピーク波長が360 nmの紫外線LEDを用い,ガフクロミックEBT2に対して最適な紫外線照射時間を調査したところ,4分の紫外線Aの照射で十分効果的であった. この結果から,ガフクロミックフィルムは診断用の高感度フィルムであるXR-QA2を用い,作製した紫外線の波長385 nmの紫外線Light Emitting Diode (LED)を使った紫外線照射装置での照射強度について調査した.つまり,このXR-QA2の濃度不均一補正に用いる紫外線Aの照射量と時間について検討した.方法はフィルムの切片に12,800 μW/cm2 の強度の紫外線Aを5分毎の長さで0分から30分まで照射し,最適な濃度に変化する照射時間を求めた.その結果,15分から20分程度の照射時間で十分であることが判明した. ガフクロミックフィルムを利用したCT スキャンの三次元線量分布図作成に関する研究では,一回の単純回転照射(シングルスキャン)のみであり,且つ,アクリル半円柱を合わせたときの直径は10と16 cmの場合ではあるが,プロファイルカーブを用い解析した.その結果,X線照射部では両方とも表面の線量が高く,中心部の線量が低い結果を得た.しかしながら,照射部位に近い散乱線部では逆に表面より中心部の線量が高くなった. また,線量分布の三次元表示と解析に関してのアルゴリズム作成は,横断面の線量分布表示アルゴリズムの一部まで完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線治療用ガフクロミックフィルムEBT2における不均一性の補正方法について紫外線を照射することを企図した.紫外線蛍光灯を用いた場合はピーク波長360 nmの紫外線Aが最も反応が良い結果を得ているが,紫外線波長を限定できる紫外線LEDを用いて最適な紫外線波長を調査したところ,375 nmの紫外線Aの反応が最も効果的であった. このガフクロミックフィルムへの紫外線照射強度は4分の紫外線Aの照射で十分効果的であり,また,放射線診断用ガフクロミックXR-QA2では15分から20分程度の照射時間で十分であることが判明したことから,本研究の目的の一部であるガフクロミックフィルムの不均一性に対する補正方法である紫外線の前照射法は一応の結果を得た.これらの紫外線を照射したガフクロミックフィルムを用い,X線照射前後の画像を差分することにより,ガフクロミックフィルムの不均一性に対する精度の高い補正が可能となったことから,本研究はほぼ予定の通り進捗していると考える. 一方,CTの三次元線量分布の解析と表示に関してもほぼ予定通りである.平面画像からの解析として,スライス厚2 cmで一回の単純回転照射(シングルスキャン)のみのX線照射であり,且つ,アクリル半円柱ファントムを合わせたときの直径は10 cm(新生児)と16 cm(成人)の場合のみであるが,その線量分布の解析は一部終了した.CTのX線管の回転方向に平行な横断面方向の解析はX線照射部位と散乱線部位に分けその濃度プロファイルカーブを用いて解析を行い,上記「研究実績の概要」に示すように有用な線量分布を得た.また,水平方向の解析は,X線照射部と散乱線部の両方を同時に解析している途中である. 加えてガフクロミックの紫外線の影響についても研究中である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は問題なく進行しており,最終年は本研究の目的であるCTの三次元線量分布の解析と新たに判明した問題点の解決について以下の3項目を主に研究する. ガフクロミックXR-QA2を用い,新しく開発した半円柱型ファントムと,新しく開発した三次元の線量分布を把握できる計測方法を用い,三次元線量分布図作成のアルゴリズムについての研究を行う.現在,線量分布の三次元表示と解析に関してのアルゴリズム作成に関しては,横断面の線量分布表示アルゴリズムの一部を完成しているので,次の段階として多数枚の断面データを短時間で作成できるアルゴリズムを完成させる. また,実際のCTの線量解析として本年度はスライス厚2 cm以外の1 cmや0.5 cmでの一回の単純回転照射(シングルスキャン)における線量分布の違いの解析をおこなう.加えて,スキャンとスキャンの間隔を種々設定して,線量分布の詳細な解析を行う.また,アクリル半円柱ファントムの直径を8 cmから16 cmまで2 cm毎に変化させて上述の調査検討を行う予定である.可能であれば上記アルゴリズムを用いた線量分布の解析も行う予定である. 最後に,三次元データ作成時のガフクロミックフィルムの濃度不均一性補正の必要性の調査とその補正方法について検討する.本研究で用いているアクリル半円柱ファントムとガフクロミックフィルムを用いた線量分布評価法はX線照射領域の最大線量から散乱線領域の最低線量(ほぼ0に近い)まで,同時に評価ができる.そのため,ガフクロミックの持つ色素による濃度不均一性と反応層の厚さの不均一による濃度上昇の不均一性が低線量部分の不均一につながることになる.そこで,この不均一の補正方法の適応を検討する.方法として,これまでに研究してきた紫外線を用いたガフクロミックフィルムの濃度補正法を応用し,本方法の効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年2月27日から3月3日に開催された世界的に権威のあるヨーロッパ放射線学にて発表するための研究分担者1名分の旅費として準備していたが,研究分担者1名が所用のため学会に参加できず未使用となった(研究内容は研究代表者が発表した).未使用の研究費は,本年度の研究分担者への配分は予定していなかった.しかしながら,国際学会への発表のための旅費および参加費が必要となったため,本研究費の一部を用いる.また,研究代表者の国際学会への発表のための旅費および参加費にも用いる. 昨年度から新たに予定した白色LEDのガフクロミックフィルムへの影響については,ある程度研究は進んでおり,本研究の発表等に対して本研究費を用いる予定である.また,新たに判明したGafchromic XR-QA2 (RX-QA2)が白色LEDに反応する現象について引き続き研究するため,白色LEDを用いた画像スキャナを新規に購入し,その光源のガフクロミックフィルムへの影響を検討する予定である. 加えて,X線によるガフクロミックフィルムXR-QA2の濃度上昇と線量との関連について検討する.特にXR-QA2は散乱線領域のような低線量領域で不確実性が高くなるため,この問題の補正方法について検討する.
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