研究課題
国内で最も多く利用されている放射性医薬品(テクネチウム:99mTc製剤)の原料となるモリブデン99(99Mo)については、現在その供給量のほぼ100%を輸入に依存しており、製造元の原子炉の老朽化や空輸でのトラブルによる供給不足が深刻な問題となっている。99Moの国内自給自足を想定すると、既存の原子炉を用いて、高濃縮ウランの核分裂反応や98Moの熱中性子吸収反応を利用する手法が供給量や技術的成立性の観点で最も有望と考えられるが、多大の費用と時間、社会的理解が不可欠である原子炉の新規制基準対応や、核不拡散上の懸念から、原子炉に依存しない加速器を用いた新たな99Mo製造技術の確立が期待されている。本研究では、5 MeV/u程度の低エネルギーヘリウムビームを用いて96Zr(α,n)99Mo反応により99Moを製造する手法を検討している。この手法では反応しきい値付近のエネルギーを利用するため、他の手法に比べて副産物RIが少なく高い比放射能を有する99Moが製造できる可能性がある。本年度は、24.6, 46.4 MeVのヘリウムビームを用いて、99Moだけでなく他の反応についても励起関数測定を行い、期待されるRI収量の評価を行った。照射実験は放射線医学総合研究所AVFサイクロトロン施設C6コースで行った。5 μmのnatZr箔とnatTi箔をスタック状に重ねて照射試料を作成し、24.6と46.4 MeVのヘリウムイオンを照射した。照射ターゲットをスタック状に分割することで、入射エネルギーの異なったヘリウムイオンにより生成された放射能のデータが得られる。それぞれの試料から放出される核種固有のエネルギーを持つガンマ線を高純度Ge検出器で測定し、IAEAが提供するnatTi(α,x)51Crの標準断面積を基準としてnatZrからの生成核種に対する励起関数やRI生成率を導出した。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに実験並び研究発表が遂行できており、研究はおおむね順調に進展していると言える。
次年度は、本システムで生成される99Mo含有試料の比放射能や同位体放射能の評価を行う。また、α線入射に伴い発生する中性子の測定も行い、必要な遮へいや残留放射能の評価も行う。これまでの研究成果をまとめ、国際会議等で発表を行う。
2018年度に予定していた打合せを2019年度に実施することになったため、2019年度に旅費として使用する予定。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
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