研究課題/領域番号 |
17K10383
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 英樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 主任研究員(任常) (80425610)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 陽電子放射線断層撮影 / 炭素11 / 標識化合物 / イミダゾリン環 / ルイス酸 |
研究実績の概要 |
陽電子放射線断層撮影は半減期の短い短寿命核種で標識した11Cメチオニンや18Fフルオロデオキシグルコースなどを用い腫瘍の診断を行うことが一般的な用途であるが、標識薬物の体内動態が非侵襲的に観測できることから新薬の開発や生体機能の解明など様々な応用が期待できる手法である。特に炭素は全ての有機化合物の基本元素であることから様々な炭素11標識化合物が合成できれば新しい生命科学の知見が得られることが大いに期待される。一般に、サイクロトロンから回収される標識前駆体は11C二酸化炭素(11CO2)の状態でありこれを自動合成装置で11Cヨウ化メチル(11CH3I)として11Cメチル化標識に用いるのが最も主流な標識法である。しかし、11CH3Iで合成できる化合物には制限がありより多種の標識化合物の合成には他の前駆体を用いた手法が必須である。そこで11CO2を11C一酸化炭素(11CO)に変換し、パラジウム触媒を用いた炭素-炭素結合反応で11Cメチルエステル基(11CO2Me)を種々のホウ素化合物に導入する反応を開発した。この11CO2Meはアンモニア存在下で容易に11Cアミド基に変換可能であったことから、この11CO2Meをルイス酸触媒下で種々のヘテロ環に変換することを計画した。初年度は11Cイミダゾリン環の構築を目指し様々なルイス酸存在下での反応を検討し、その結果11CO2Meとエチレンジアミンをトリメチルアルミニウム(AlMe3)存在下で反応させることで目的の11Cイミダゾリン環の構築に成功した。AlMe3は加水分解後シリカゲルで除去可能であったが大量の不溶物が生成するため目的物の回収率が低下した。そこで当該年度はさらにルイス酸および金属塩存在下での反応検討を行いある種の4価の遷移金属の存在下で反応を行うことで効率よく、かつ後処理後も不溶物が生成しない手法を見出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では通り反応性の高いトリメチルアルミニウムに代わる比較的温和なルイス酸で11Cイミダゾリン環を構築することができたが、手法の探索に予定よりも時間がかかってしまったため研究の進行がやや遅れてしまった。しかしトリメチルアルミニウムでの反応後に必要であった不溶物のシリカゲルでの除去操作が不要になったため、本手法での標識化合物の自動合成に目途が立った。従って、当初計画よりやや遅れているものの今後の研究は問題なく進行できると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はトリメチルアルミニウムに代わり新たに見出したルイス酸(4価の遷移金属)を用いた11C標識イミダゾリン環の構築に加え11C標識オキサゾリン環およびチアゾリン環誘導体の構築を目指す。また合成した11C標識イミダゾリン環、オキサゾリン環およびチアゾリン環を酸化反応でヘテロ芳香環化し11C標識イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環へと変換させ、さらに自動合成装置による標識化合物の合成と小動物での体内動態測定を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に申し込み、支払いを行った国際学会の発表が次年度に開催されるため当該年度での支出が出来なかったため次年度に繰越した。また消耗品と考えていた高速液体クロマト用のカラムが予定よりも耐久性があったため余計に購入する必要がなくなったため。
|