研究課題/領域番号 |
17K10384
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
永津 弘太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 研究統括(定常) (30531529)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核医学治療 / アルファ線標的アイソトープ治療 / アクチニウム225 / ラジウム226 / ターゲット / 核反応 / 放射性医薬品 / 放射線治療薬 |
研究実績の概要 |
組成不明のレガシーRa線源をいくつか入手し,前年度同様の手順(Ra線源を解体後,1.5 M Na2CO3水溶液中で85℃1時間の加温→濾別→1 M HClに再溶解)を経て,約7-9割のRa-226を水溶性Raとして回収することが出来た。回収率の差は組成の差異や経年効果などによるものと考えている。 Ac-225とRa-226の分離において,不純物のひとつPo-210の除去は大きな課題であり,H2Sによる除去の有効性を確認しているが,より簡便な方法を検討した。即ち,DGA樹脂にAc-225を吸着させた状態で4 M HNO3及び8 M HClによる洗浄を行うことで,高核種純度のAc-225が得られることを確認した。 Raターゲット調製において,本法ではアンモニア性アルカリ条件下,Ra+++(NH4)2CO3→RaCO3↓による沈殿形成を方法の主体としている。本反応を効率的に行うべく,Ca-40をキャリアとして添加・共沈させる方法を試みた。アルカリ土類金属(M(II)CO3↓)の共沈により,9割以上のRa-226をターゲット物質として調製することに成功した。但し,CaとRa両炭酸塩の溶解度の差に起因すると考えられるMCO3析出量の再現性が悪く,いわゆるターゲット厚みの制御に課題が残る。ターゲット厚みは,入射粒子のエネルギー減弱,即ち,Ac-225収率のみならず,不純核種の生成割合等にも強く影響を与えるため,一層高度な品質管理を目指すためにはターゲット調製法の見直しを必要とするものの,本法は極めて簡便な手法でRaからAc製造に関する可能性を評価出来ると考えており,引き続き本法によりAc-225製造を行い,分離精製に至る機械化等を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ra-226をターゲット物質に,高品位Ac-225の製造が行えているため。引き続き,被ばく低減を目的とした自動化処理に関する検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り,Ac/Raの分離精製に関する自動化を検討すると共に,Raターゲット調製の均一化に関する検討を行う。具体的には,キャリア添加を要さず極少量のRaを固定化する手法として,電着によるRaターゲット調製の可能性を評価する。本研究の昨年度の成果として,電着を方法の主体とするターゲット容器に関する知財化を試みており(特願2018-060672),当該手法の可能性評価ならびに最適化について,検討を行うこととする。 同時に,従来法となる沈殿・共沈法を利用したRaターゲット並びに当該法から得られるAc-225を利用し,Ac/Ra分離精製に関する最適化及び標識率等の品質評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Raターゲット調製において,新規手法(電着法)を検討すべく,当該備品類の購入に備えるための繰越し額として準備した。
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