研究実績の概要 |
現在、臨床67Cuを製造する方法として、加速器を使う複数のルート68Zn(p, 2n)67Cu, 68Zn(γ, p)67Cuがあるが、いずれも大量のZn(数g~数10g)をターゲットとし、その分離精製過程も複雑(陽イオン交換樹脂→キレート樹脂→陰イオン交換樹脂)である。今回、研究では、数gオーダーのZnターゲットからAgを共沈剤として67Cuを簡便に分離精製する方法を開発した。具体的には、酸溶解させたZn内の67Cuを、Agを共沈剤として用いて沈殿ろ過することで、ターゲットから大部分のZn(と放射Ga)を、簡便に取り除くことができた。ろ過フィルターからの67Cuの再回収は、回収溶液(混酸)や抽出時間を調整することで98%以上の回収率を実現できた。同様のろ過、回収をもう一度繰り返すことで、ZnとGaを十分量(Gaは検出限界以下)まで低減することに成功した。共沈剤として加えた銀はその後、グラスフィルターを通すことで投与量の0.5%以下まで取り除くことができた。実際に、natZnをターゲットとして製造実験を行い従来法(イオン交換樹脂法)と比較したところ、両者はほぼ同等の品質であった(現在論文を投稿中)。今回開発した共沈分離法はイオン交換樹脂を一切使用しないことから、分離精製時間や手順を大幅に短縮でき、製造の高効率化が見込まれる他、ZnやGa以外に、Ni, Coも共沈で取り除くことが示されたことから、他の核種分離精製(例えば64Ni→64Cu)にも適用の可能性が示された。 また、これと並行して、製造過程の自動化を考えており、それに関し汎用自動分離装置を開発し、その成果を論文誌(Applied radiation isotopes 2019)に報告した。なお、Ag核種のPdからの分離については、陽イオン交換樹脂を用いることで効率よく分離されることが示された。現在、放射性Rh, Pdを用いて溶離の最適条件を調べている。また、ターゲットとして使用したPdの回収方法についても検討している。
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