研究実績の概要 |
現在、Ag核種の製造にはもっぱら原子炉が使用されているが、一部の核種(Ag-105, 110m)では加速器の利用Pd(d , x)Agが代替法として有効である。その場合、長半減期の放射性副生成物Rh-101m, 102mの分離が不可欠になるが、これまでのところそれを考慮したシンプルな分離法は報告されていない。そこで、今回の研究では、原子炉ルートで報告されたAg-111(内照射療法核種)の分離法をベースにAg, Rh, Pdの分離に最適な方法を、照射ターゲット(Pd)のリサイクル法も含めて検討した。その結果、陰イオン交換樹脂(Dowex1-x8)を用い、塩酸濃度を1M, 4M, conc.と変えることで、Rh, Ag, Pdを分離することができた(Agの収率は98%)-先行研究では、10Mとconc.でAgとPdの分離を行っているが、10Mの場合、交換樹脂内でのPd移動が無視できず、Agの収率を上げようとした場合、製品にPdが混在する。また、ターゲットのPdはNaBH4を用いることで、回収率90%でリサイクルが可能になった。なお、リサイクルされたPdに対しても照射実験を行い、同等の生産量を得ている。今回得られた分離精製の知見は、そのリサイクル方法を含め、Pdをターゲットとした製造であれば、原子炉の場合(Ag-111)はむろん、今回雑核種として排除した、放射性Rhを目的核種とした場合にも有効である。これらの成果は論文誌(Radiochimica Acta 2020)に報告した。また、先に行った、イオン交換樹脂を用いないCu-67(内照射療法核種)の新規分離法についても、成果をまとめ、論文誌(Radiochimica Acta 2019)に報告した。
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