これまで、67Cuの新しい製造法と、67Cuの代替核種として注目した111Agの分離法について研究してきた。67Cuに関しては、ターゲットを酸で溶解後、硫化水素を用いて硫化銅とし、そこに硝酸銀を添加することでCuS-AgS(共沈)としてメンブレンフィルターへの補足を可能とした。捕捉したCuは混酸によりフィルターからの再回収を行った後、再び同様の操作(共沈後にフィルタリング)をすることで、混入する亜鉛やニッケルのコンタミをイオン交換樹脂を用いた分離法と同程度まで軽減することができた(共沈分離法)。この方法には、分離にイオン交換樹脂を必要としないため、自動化により分離時間の大幅短縮が見込めることに加え、分離精製のため有機溶媒が不要で、かつ酸や塩基の使用量は従来のイオン交換樹脂を用いた方法と比べて非常に少ない(環境負荷が少ない)という利点がある。後者の111Agに関しては、陰イオン交換樹脂(Dowex1-x8)を用い、分離液として塩酸濃度を調整することで、放射性ロジウム、銀、パラジウムを効率良く分離できた。さらに、ターゲットとして用いたパラジウムの回収法もあわせて検討したところ90%の高収率での回収が可能となった。なお、Agの分離法についてもより環境負荷の少ない(イオン交換樹脂を用いず、酸や有機溶剤の使用を抑えた)分離法を目指し、吸着による分離の可能性についていくつかの吸着材を用いて試験した。しかしながら、吸着率の低さや、また高い場合でもAgの脱着に先の分離法と同程度かそれ以上の無機酸が必要であったことから、総合的に判断した結果、現時点において111Agの分離に関しては、イオン交換樹脂による分離法が最適と結論付けられた。
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