研究課題
本研究ではミクログリアに発現して機能を調節しているプリン受容体P2X7およびP2Y12受容体に着目し、これらの受容体に結合する特異的なリガンドのポジトロン標識合成を試みた。また、これらのプリン受容体リガンドを動物に投与して小動物PETカメラにて脳内の動態を解析した。P2X7受容体リガンド[11C]JNJ42253432標識合成し、ラットに投与したところ脳への移行性が確認された。またピロカルピン投与による側頭部障害モデルおよびLPS脳内投与モデルにおいて、障害部位への[11C]JNJ42253432の集積が確認されたが、2分前にコールド1mg/kgを静脈内前処置投与しても結合の阻害が見られなかった。さらにアルツハイマー病モデルマウスの脳切片を[11C]JNJ42253432溶液に浸漬してオートラジオグラフィーを行ったが、脳への特異結合は確認できなかった。このことから[11C]JNJ42253432の障害部位への集積はP2X7受容体に依存しない集積と考えられた。また、P2Y12受容体AZD1283のシアノ基へのポジトロン標識合成に成功し、[11C] AZD1283溶液に野生型マウス脳切片を浸漬してオートラジオグラフィーを行ったところP2Y12受容体への結合が確認された。また、アミロイドβ産生するアルツハイマー病モデルマウス切片ではP2Y12受容体の増加が確認された。この[11C] AZD1283をラットに静脈内投与し脳内への移行性を小動物PETカメラにて撮像したところ脳内への移行性は認められなかった。これらのことから、[11C] AZD1283はP2Y12受容体のリガンドとしては有用なものの、in vivoにおける脳内のミクログリアイメージングは困難であると判断した。
2: おおむね順調に進展している
計画していたポジトロンリガンド標識合成に問題なく成功しており、脳内のin vivoの動態についても確認することを達成している。
P2X7受容体リガンドについては[18F]JNJ-64413739に変更して同様の評価を行う。また、P2Y12受容体リガンドについてはAZD1283を基に別の部位に標識を行いP2Y12リガンドの特性を維持しているか検証する。
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Journal of Alzheimer's Disease
巻: 61 ページ: 1037~1052
10.3233/JAD-170509
http://www.nirs.qst.go.jp/seika/brain/index.html