研究課題
今年度の研究では、脳内に発現するP2X7受容体が実際に神経炎症でどのように変動するか抗体免疫染色法およびオートラジオグラフィー(ARG)法で検証を行った。ピロカルピン誘発側頭部障害ラットの脳切片をP2X7受容体抗体で免疫染色したところ、扁桃核、海馬および視床においてP2X7受容体の発現が増加していることが明らかとなった。またIba-1、GFAPおよびNeuN抗体と共染色を行ったところ、Iba-1陽性ミクログリアとP2X7抗体染色像が一致し、それぞれアストロサイトおよび神経マーカーのGFAPおよびNeuN抗体染色とは一致しなかった。この結果から、本モデルラットの脳内で増加するP2X7受容体はミクログリアに特異的に増加することが明らかとなった。さらに、同ラットの脳切片を活性化ミクログリアで増加するTSPOの免疫染色を行い、P2X7免疫染色像と比較した。この結果TSPOは扁桃核外側の神経細胞が脱落した箇所で増加するミクログリアで発現が増加しているに対し、P2X7受容体は扁桃核の内側を中心に増加しており、TSPOとは完全に一致しないことが明らかとなった。また、P2Y12受容体のイメージングに関してはAZD1283の窒素基に直接[11C]メチルを導入し、標識合成した[11C]N-CH3-AZD1283動物PETおよびARGで評価を行った。[11C]N-CH3-AZD1283は[11C]AZD1283に比べ脳内への取り込みが増加したものの、ARGによる評価ではP2Y12受容体に対する結合が消失した。従って本リガンドによるP2Y12受容体の画像化は難しいと判断した。
3: やや遅れている
P2X7受容体PETリガンド[18F]JNJ-64413739の前駆体の入手が遅れ、本年度内の評価実施には至らなかった。
P2X7受容体のイメージングに関しては[18F]JNJ-64413739結合特性について、in vivoおよびin vitroで評価を行う。P2Y12受容体のイメージングに関しては企業との共同研究の化合物ライブラリーから標識リガンド候補の探索を行う。また認知症モデルマウスのP2Y12受容体発現量変化を[11C]AZD1283のARGにより検証を行う。
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Journal of Alzheimer's Disease
巻: 64 ページ: S353-S359
10.3233/JAD-179933
https://www.nirs.qst.go.jp/seika/brain/index.html